異世界に落ちたオレは、キミの最強の武器になる

朝日みらい

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魔女狩り

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「イリスなら問題ないから、明日にでもしてくれよ」

「ちがくて、あんたのこと。こっちで面接するか、ここから追い出されるか、今、決めるなさい」

「ここは、イリスの家だろ」

「違う。ここは、隊員用の借家だ」

 すやすやと眠りこんでいるイリスを、ケンは起こしたくなかった。

「長くならないか? イリスが心配だ」

「だいじょうぶ。お前、ここで見張ってろ」
 セラフィーヌが犬に命令すると、

「キャン」と、ドーベルマン野郎は、おとなしく庭に座り込んだ。

「ほら、行きましょう」

 ケンを乗せて、竜が引く豪奢な馬車はこじんまりとした家屋が並ぶ地区を飛ぶように走る。

 向かい合わせに座って、
「これから国王の愚痴を聞きに行くんだけど」と、ため息をつくセラフィーヌのそばで、
「竜の馬車って、はじめてで! 空、とべるっすか」
 もう、ケンは窓に顔面を押しつけて興奮している小学生気分。

「んまあね、飛んでみたい? じゃあ、飛ばせ」

 セラフィーヌの命令で、御者が手綱を引くと、竜の翼が羽ばたいて、ぐんぐんと空を飛び、旋回している。まるで、ヘリコプターで上空を旋回していると同じ感覚。

 急激に速度を上げて、ケンは竜車の窓から身を乗り出した。

 王都の円状の都市、城壁はそれをぐるりと囲うように同じ円を描いて構築されている。

 都市内部の構造は規模の大小を無視すれば、スポーツ観戦などが行われるスタジアムの形式が近いだろうか。
 外周がもっとも位置的に高く、中央へいくに従って低くなる形で高低差がついている。

 その階層ごとに段差のある大地には石造りの建物が所狭しと並び、ケンの目にはこれまででもっとも西洋的な街並みの印象に近しいものを与えた。

 さらに街並みの各所には大きな水路が走っており、円状の都市を四等分するような形で運河が存在する。渡し船のようなものがいくつも水面を泳いでいるのが見える。

「ヤバい、ヤバいっす」

 26歳の体で脳内小学生の男はすっかりもどってしまって、足をばたつかせてはしゃぐ。そんな背中を、半ば呆れたようにセラフィーヌは黙って観察している。

「この竜、一匹ほしいな」
「ならいるよ、あそこに手の負えないじゃじゃ馬が。野生で扱いにくいかもしれないけど」
 セラフィーヌは、赤茶色の岩だらけの荒野を窓から、指さした。

「おう! なら、一匹捕まえにいくか」

 興奮するケンの背中に、セラフィーヌはわざと軽く咳払いをしてから、

「それで、どう? あなたを正式に入隊する話」
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