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おかしな同級生

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  食事を終えて、ふたりは木陰のベンチに座った。

「映画好き?」
 類子は尋ねた。

 興味のある演劇は欠かさず観に行く。映画も嫌いではない。

「うん」
「よかった。ブランコの少女っていうやつ。あたしの連れがチケットをもらったんだ。新宿の映画館なんだけど。良かったら行かない?」

 確かフランス映画で単館上映されているものだ。
 ブランコ乗りの少女と少年の物語。
 そう新聞の片隅に広告が出ていた。

「なら、うちの車でどう。呼べばすぐ来るよ」
「ええっ! それはいいわね!」
 類子は、子供のように飛び跳ねた。

 橋を渡った先の駐車場に黒光りのクラウンが停まっていた。

 広々とした後部座席に二人が乗り込むと、塩崎はゆっくりと発進させた。
しばらく類子はキョロキョロと落ち着きなく車内を見回した。

 それから子供のように丸い顔をガラス窓に押し付けて、過ぎ去る街並みを見つめる。

「あたし、乗るの初めてなんだ」

 興奮したように類子は言った。

「こういう車種に?」
「車っていう乗り物」
「ふうん…」

 光子は驚きを隠しながら頷いた。

 類子は姿勢を戻すと、丸いクリクリした瞳を向ける。

「15才までずっと閉じこもって生活してきたんだ。それからミキオたちと暮らし始めたんだ。けど、ペーパードライバーで運転が下手で。これで探偵やっているのだから感心しちゃう。だけど、助手のサチはプロ顔負けの腕前。でもね、性格が最低。あたしとミキオの仲がいいから嫉妬して一度も乗せてくれないの。もう嫌になるんだよね」

「探偵事務所で暮らしているっていう?」

「うん、そうなの」
 類子は頷いた。

「大空探偵事務所っていうところ。以前は東京の町田にあったけど、ある事件が縁でね。大林次郎さんという方が格安で自前のビルの一室を貸してくださることになったの。それで緑が丘市内に引っ越したの。次郎ビルの3階。専門は迷子のペットや浮気調査。だけど最近は詐欺事件の依頼があって 、結構忙しくしている。だから、たいくつな電話番をやらされるんだよ。仕方ないけど」

 車は一般から高速道路に入り、スピードを上げる。

「それに、ちょうどいいのよ。今日は、お母さんの命日だし」
 そう言ったきり、類子は窓に吸い付けられて動かなくなった。
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