[完結]仮面の令嬢は、赤い思い出を抱いて眠る

おかしな同級生

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　映画館は、ファッションビルの8階にある。赤いカーペットが敷かれた入口には、ポップコーンや飲み物が陳列されている。

　７時の開演前に備えて、それを買い求める観客でごった返していた。客席は100人程で、スクリーンも大きくはない。

　それでも類子は大前列の中央に陣取って、隣のシートをポンポン叩いた。

「ちょっと待っていて」

　座ると同時に、ピンポン玉のように類子は離れた。そしてラージサイズの飲み物2つに、ポップコーンを１つ抱えて戻ってきた。

「あたしはポップコーンいらないから」

　類子は飲み物だけ肘掛に置き、ピンキーの袋を開けた。もちろん、持ち込み禁止だが、光子は黙っていた。

   ブザーと共に劇場は暗闇に包まれ、第二次世界大戦直後の瓦礫の街並みが浮かび上がった。

　父親が戦死し、貧困で母親からも見捨てられた幼い兄妹のボリスとシュザンは、田舎の孤児院に送られる。

　数年後、ボリスの屈強な体に惚れ込んだサーカスの団長が彼一人だけ連れていこうとする。

　しかしボリスは妹と一緒でないと行かないと拒絶する。仕方なく、団長は二人を引き取る。

　二人はブランコ乗りの特訓を受け、ボリスはめきめきと頭角を現すが、シュザンはなかなか芽が出ない。ボリスは内緒で賢いシュザンを学校に通わせる。

　ボリスはサーカスの看板にまで上り詰め、シュザンも教師を目指して勉強する。その頃シュザンに、同級生で貧しいが誠実なコランという恋人もできた。

　しかし、ある公演中にボリスは転落して足に大怪我を負ってしまう。体に障害を抱えたボリスは部屋に閉じこもり、酒に溺れるようになる。

　シュザンは生活費を稼ぐため、そして兄に生きる希望を取り戻してもらうために学業を諦め、ブランコ乗りに復帰する。

　周囲の冷ややかな視線の中で、それでも決して諦めないシュザンの姿に、次第に支援の輪が広がっていく。

　そして本番前に、いままで閉じこもっていたボリスが、コランに連れられてシュザンのいる楽屋に来る。

　実は前日の練習中に彼女は腕を痛めていたのである。しかし、何事もなかったかのように明るく振舞うのだった。

　そして本番。安全ネットが外された舞台で、シュザンは満員の観客の前で空中高く舞い上がる…。

　そこで映画は終わった。