[完結]仮面の令嬢は、赤い思い出を抱いて眠る

朝日みらい

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おかしな同級生

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「シュザンはどうなっちゃったんだろうねえ。凄く気になっちゃう。白黒はっきりして欲しいわ」

 繁華街のレストランで、ステーキを口に押し込みながら類子はぶつくさ、批評を始める。

「いいじゃない。その後は私たちがどう解釈してもいいんだから」

 サラダボールをホークでつつきながら、光子は応えた。

 最後の飛ぶ直前、兄と恋人を高台から見下ろして青い瞳に涙を浮かべるシュザンの表情。まだ脳裏にこびりついていて離れない。

 そんな作品が、光子は好きだ。

 映画館を出ても、そんな余韻にいつまでも浸っていられるなんて、素敵ではないか。

 しかし、そんな想いは、類子の発言で、もろくも崩れさった。

「シュザンを演じてた女優さんって、この間離婚したらしいんだ。原因は旦那の浮気だってよ」
 類子は、物知り顔で言った。

 現実に強引にひき戻されて、光子ははたと、相談したいことを思い出した。

「あのね…これに参加しようかなって、思って」
 光子はハンドバッグから劇団のチラシを丁寧に広げる。

 類子はそれを手にとり、じろじろと眺めた。

「20日って、明後日じゃん」
「でも、自信ないの」
「興味あるなら、やってみなさいよ」
「そう思う?」

 類子は、光子を真正面から見つめた。

「はっきり言うけど。みっちゃんってさ。一見近づきがたいっていうか。何かんがえるか、分かんないとこ、あるよね。見えない仮面みたいなもの、いつも被ってる」
「そうかな……」
「そのまま殻から抜けださないと、窒息しちゃうよ。あたし、応援する。どんな失敗でも、どんな危険に巻き込まれようとね!」
「それは、大げさかも。でも、ありがとう」

 光子は笑った。同時に急に身が軽くなって、宙に浮遊してしまう気がした。

 自分のことを理解してくれる友人のがいることが嬉しかった。

「ところで、またみっちゃんの車でうちに送ってくれないかなあ?」

 類子は照れくさそうに帽子を掻いた。
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