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怪物の正体

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麗子は、つんと首を持ち上げて腕を組んだ。
「ダメなの?私たちはお友達でしょう?お友達を中に入れちゃダメなの?」
「…わかったわ。でも汚れているわよ」
管理人は、見慣れない少女に気づいて目を吊り上げた。
勘のいい麗子は、すぐに歩み寄っていく。
「あの、ちょっとお聞きして構わないかしら?」
麗子は管理室の窓ガラスに首を突っ込んで、ウインクした。
「何かね?」
可愛い訪問者に、老人も思わず頬を緩ませる。
麗子は、おもむろに胸元の携帯電話を取り出した。
わざとらしく、ブラジャーから胸元が見えるように。
「この人、ここに来ているかしら?」
その画面には、にこやかにほほ笑む登と麗子がお揃いで映っている。
麗子の背後で、光子はひどく怯えた。いつも毎日のように2人で連れ立って歩くのを目撃されているからだ。
管理人は、瞬時に光子の表情を読み取った。
「ふうん。知らないねえ」
老人は麗子を見ながらとぼけた。
「本当に?よく見て」
「知らんよ。すまんねえ」
「そう…」
落胆して肩を落とすと、麗子は首を引っ込めた。
「ここよ」
光子は、自宅のドアに鍵を差し込んだ。
「へえ、すごく広いじゃないの」
開けるなり、麗子は靴を放り出して飛びこんでいく。
「ちょっと待ってちょうだい…」
そんな光子の声など、彼女には無用である。
寝室を探り当てると大きなベッドのシーツに頭を突っ込んだ。
「毛が一本もないわよ」
と麗子は首を出した。
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