[完結]仮面の令嬢は、赤い思い出を抱いて眠る

朝日みらい

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赤い記憶が戻る時

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 薄暗い独房で冷たい夕食を食べていると、警官の足音がした。
「あんたに電話だ」
透明なプラスチックに囲まれたブースに、机と受話器が置かれている。
「もしもし、望月だ」
「登…私…」
とめどなく涙が溢れ出る。
「何も言わなくていい。無実だって分かっている。人を殺せる訳がない。今、稽古場に、君のお友達が来ている。すぐ代わるから」
それから、懐かしい声がした。
「大丈夫?」
「類子…」
感情が高ぶって、思うように口が動かない。
「何泣いてるんだよ。しっかりしなきゃダメだよ。あたしもミキオもサチだっているんだ。全然心配要らない。絶対にミッチーは無実なの。分かったわね」
「うん…」
光子は涙を拭って頷いた。
「それで、ミッチーの部屋に入りたいのだけど、どうしたらいい?」
「運転手の塩崎に相談して。彼なら全て知っているから」
そして、彼の電話番号を教えた。
「分かった。じゃあ、また電話するわね」
「待って…」
すでに電話は切れていた。
最後にもう一度、登の声が聞きたかった。

   翌日の朝から刑事は取調べを続けたが、光子は首を振り続けた。
その次の日もそうだった。
早朝から刑事は何度も同じことを繰り返した。
「嘘を突き通すことなんて出来ないぞ」
机を叩きつけて若い刑事は言った。
それでも、光子はゆっくりとぬるいお茶をすすった。
「嘘なんてついていません。やっていないのですから」
そんなやりとりが1時間程続いてから、部屋に別の刑事が飛び込んできた。
「あの…先ほど郵送で届けられたものです。差出人はありません」
そして小さなレコーダーを取り出した。それは麗子が持っていた録音機であった。中年の刑事はいぶかしそうに手にとって眺めた。
「再生してみろ」
若い刑事はボタンを押した。

男女の会話が始まる。
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