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終章 幕が上がるとき
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「どうして、リチャードは戻ってこないのかしら…」
光子はやっと台詞を思い出した。
一言が出てくると、不思議と緊張がほぐれて湯水のごとくすらすらと言葉が浮かんできた。はっきりと守がそばにいる安堵感があった。
心配になると、すぐ最前列を見た。
彼は手を広げたり引っ込めたりしながら、指示を出してくれた。
転びそうになる前に、彼はそっと舞台の凹みを指差して注意をした。
上手くいったときは、飛び跳ねて拍手した。
いつの間にか、光子は役柄に深く入り込んだ。
もう自分が光子であることも忘れていた。
彼女はメアリーでありメリサだった。
その圧倒的な演技に、観客たちも引き込まれた。
最初は大富豪の令嬢で、しかも殺人事件に巻き込まれたヒロインであったことなど、もうどうでもよかった。
観客はラストまでかたずをのんで見守った。
「ああ、サム…。どこにも行かないで。お願いよ」
崖にリチャードを突き落として、戻ってきたサムの腕をメリサは掴んだ。
「平気だよ、メリサ」
サムはそばに佇んで、やさしく手を重ねる。
「いつまでも僕は君のそばで見守っているよ。この胸の中に生き続けるから。
さあ、勇気を出して立ち上がってくれ」
メリサは手を取られて立ち上がる。
サムはそっとメリサにほほ笑むと、立ち去って行く。
メリサはまっすぐ守を見た。
大粒の涙を流している。
そっとメリサは胸を押さえた。
そして最後のセリフを放つ。
幕が下りた。
観客は思わず立ち上がっていた。
嵐のような拍手が小さなテントにあふれ出した。
光子はやっと台詞を思い出した。
一言が出てくると、不思議と緊張がほぐれて湯水のごとくすらすらと言葉が浮かんできた。はっきりと守がそばにいる安堵感があった。
心配になると、すぐ最前列を見た。
彼は手を広げたり引っ込めたりしながら、指示を出してくれた。
転びそうになる前に、彼はそっと舞台の凹みを指差して注意をした。
上手くいったときは、飛び跳ねて拍手した。
いつの間にか、光子は役柄に深く入り込んだ。
もう自分が光子であることも忘れていた。
彼女はメアリーでありメリサだった。
その圧倒的な演技に、観客たちも引き込まれた。
最初は大富豪の令嬢で、しかも殺人事件に巻き込まれたヒロインであったことなど、もうどうでもよかった。
観客はラストまでかたずをのんで見守った。
「ああ、サム…。どこにも行かないで。お願いよ」
崖にリチャードを突き落として、戻ってきたサムの腕をメリサは掴んだ。
「平気だよ、メリサ」
サムはそばに佇んで、やさしく手を重ねる。
「いつまでも僕は君のそばで見守っているよ。この胸の中に生き続けるから。
さあ、勇気を出して立ち上がってくれ」
メリサは手を取られて立ち上がる。
サムはそっとメリサにほほ笑むと、立ち去って行く。
メリサはまっすぐ守を見た。
大粒の涙を流している。
そっとメリサは胸を押さえた。
そして最後のセリフを放つ。
幕が下りた。
観客は思わず立ち上がっていた。
嵐のような拍手が小さなテントにあふれ出した。
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