【完結】義務で産まれた令嬢だけど、仮面夫婦を卒業して陽気な旦那様に愛されまくってます!?

朝日みらい

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第2章:政略結婚の相手は、陽気すぎる男でした

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 結婚式というものは、もっと重苦しいものだと思っておりました。  

 特に“政略結婚”ともなれば、式の途中で何人か昏倒するんじゃないかとか、最後は形だけのキスで済ませるのではとか。

まあ、私がするのは、口元だけの微笑とうなずき程度ですが。

 ですが──扉の向こうから歩いてきた彼は、まるで“式の主役”は自分だと言わんばかりの笑顔を浮かべておりました。

「ミレイユさん!これからよろしくね!」

 眩しい。  

 いや、礼服が白すぎるとか、髪が金色で光ってるとかじゃなくて、笑顔が、まぶしすぎます。

 思わず視線をそらしてしまった私は、代わりに礼儀正しくうなずきました。

口元はもちろん、微動だにしません。

さすがに目を閉じて「うるさいです」と言うわけにもいかず、私は淡々と告げます。

「私を利用するのは構いません。でも、心には立ち入らないでください」

 これで少しは黙ってくれるかと思いました。

多少なりとも「冷たい」とか「怖い」とか思ってくれるかと。  

 ところが──彼は、満面の笑みのまま言ったのです。

「じゃあ、まずは友達から始めようか!」

 ……はい?友達?結婚式で?夫婦じゃなくて、友達?

「いや、だってさ、いきなり『奥さま』って言われるより、“友達”のほうが喋りやすいかなって思って」

 ……この人、頭は大丈夫なのでしょうか。

 普通、“政略結婚”の相手に向かってそんなノリで話しかけます?  

 私、冷たい視線で睨んでいたはずなんですけど。

彼はまるで気づいていないのか、むしろノリノリで「ねえ、呼び方どうしよう?ミレイユって可愛い名前だけど、“ミレミレ”とかどう?」などと言い出しました。

 ミレミレ。

あだ名になっても絶対に使われたくないバリエーションです。

「その呼び方は今後永久に却下させていただきます」

「えぇっ、ちょっとくらい考慮してくれても……じゃあ、“みーちゃん”は?」

「それは更に却下です」

「じゃあ“アルちゃん”……あ、それは姓か。うーん……じゃあ“ミレイユ”って呼ぶね!」

「……初期案に戻ってきたじゃないですか」

 彼はケラケラと楽しそうに笑いながら、式場のスタッフに話しかけたり、隣にいる私に意味もなく手を振ったり、終始“にこにこ王子”状態でした。

 おかしいな……これは間違いなく“政略結婚”だったはずです。 
 
 なのに、隣にいる彼の言動は、完全に“出会い系の成功者”のような雰囲気です。

 式が終わり、新居となる公爵邸に到着しても、そのテンションは一切落ちませんでした。

「ミレイユ、こっちが僕の……いや、僕たちの寝室だよ!ベッド大きいでしょ、これなら寝返り打っても距離あるし」

「では、別室に変更をお願いします」

「え?」

「私は夫婦生活を送るつもりはありませんので、別室を希望します」
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