【完結】傷跡に咲く薔薇の令嬢は、辺境伯の優しい手に救われる。

朝日みらい

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(11)小さな贈り物

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また別の日、ラウルが「セリーヌ、これを受け取ってほしい」と、手のひらに収まる小さな木の箱を渡してきた。

彼女は少し驚きながら、その箱を受け取ると、ラウルが照れくさそうに目を逸らすのを見た。

箱の蓋を開けると、中には白い花を模した繊細なブローチが収められていた。

セリーヌは思わず息を呑んだ。  

「これ、どうしたの?」と、少し戸惑いながらも尋ねると、ラウルは少し照れたように答えた。  

「この前、温室で見せた花をイメージして作ってもらったんだ。君が気に入るか分からないけど…」  

彼の不器用ながらも真剣な表情を見た瞬間、セリーヌの胸はじんと温かくなった。

彼の気持ちが伝わってきて、思わず言葉が出る。  

「こんなに綺麗なものを…ありがとうございます。」  

彼女が微笑みながらブローチを胸に当てると、ラウルは満足そうに頷いた。その顔には、少し照れくさい笑みが浮かんでいる。  

「君には花が似合うんだよ、セリーヌ。」  

その一言が、セリーヌの心の奥底に染み渡るように響いた。

まだ少しぎこちないものの、確実にラウルへの感情が深まっていくのを感じた。

彼の素直な言葉が、何よりも大切な気持ちを伝えてくれるようで、セリーヌの顔も自然とほころんだ。  

---

秋が深まり、城下町で年に一度のお祭りが開かれる日がやってきた。

セリーヌは少し緊張しながらも、ラウルと共に賑やかな人混みの中に出かけた。

町は華やかな色と音に包まれていて、楽しげな笑い声や屋台の音が響き渡っている。

セリーヌはそんな光景に少し目を見張った。  

「こんなにたくさんの人の中に出るのは久しぶりですね。」

セリーヌは少し照れくさそうに言う。  

「まあ、私もだ。」

ラウルは自分の髪を軽く引っ張りながら、にっこりと笑った。

「だが今日は楽しい時間にしてみせる!」  

彼は胸を張り、自信たっぷりに言った。

セリーヌはその姿を見て、少しだけ緊張が解けていくのを感じた。

彼が手を伸ばして、セリーヌの手をしっかりと握る。

その温かさに、セリーヌは思わず顔を赤らめた。  

屋台では、焼きリンゴや手作りのお菓子が並び、ラウルはまるで子どものように嬉しそうに次々と購入していった。

セリーヌはそんなラウルの姿を見ながら、少し笑っていた。  

「これも食べてみろ、セリーヌ。」

ラウルが自信満々に差し出した焼きリンゴを見て、セリーヌは少し悩んだ。  

「そんなに食べたら、さすがにお腹が…」  

「大丈夫、君は細いんだから。もっと食べなきゃ!」

ラウルはそう言って、まるで自分が食べるかのように楽しげに勧めた。

その笑顔に、セリーヌは少し笑いながらも、彼の優しさに心を打たれた。  

その後、二人は夜空に打ち上げられる花火を見上げながら、立ち止まった。

花火が空に咲くたびに、セリーヌはその美しさに見とれていた。

ラウルは彼女の隣で静かに立っていて、その横顔は花火の光を反射して、いつもより一層優しげに見えた。  

「ラウル、今日はありがとうございます。こんなに楽しい時間を過ごせたのは久しぶりです。」

セリーヌがゆっくりと話しかけると、ラウルは顔を向け、にっこりと笑った。  

「そんなこと言うなよ。これからもっと楽しい日々が君を待っているさ。」  

彼の言葉が、セリーヌの心にしみわたる。

未来への希望を感じさせ、まるでその言葉が予感のように感じられた。

セリーヌは心の中で、今こうしている時間が永遠に続けばいいと、願わずにはいられなかった。
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