とまどう気球

朝日みらい

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 みんなに手をふられながら、お父さんがゴンドラに乗りこんだ。

 とつぜん、ラーラはかけだした。お母さんのうでをふりはらい、お父さんを追いかけてゴンドラに入った。

「おい、ラーラ、どうした?」

 ラーラは、おもいきり、お父さんにほほをおしつけた。

「大すきよ。ずっとそばにいたいよ」
「父さんもだ。さあ、もう、あぶないから降りような」

 ラーラがゴンドラから地面に降りた後、「ボッ!」と燃料に火がついた。

 でも、気球は飛んだものの、なかなか空にのぼらない。

「なんで、なんで」
「どうした、どうした」

 みんな、大さわぎになっている。あせり顔のみんなとちがって、ラーラだけみょうに落ち着いている。

「ラーラ?」

 後ろにいたセルマが、ハッとしたようにラーラのスカートのポケットを見た。

 いつも、ボケットが小石を入れてふくらんでいるのに、今日だけぺしゃんこになっている。

 さっきお父さんにだきついた時、ラーラはそっと石をゴンドラの中にすべりこませておいたのだった。

「一グラムでも重かったら飛べないくらいに、ぎりぎりまで切りつめましょうよ」

 技術者の言葉を、ラーラはちゃんとおぼえていたのだ。

「なにかしたの、ラーラ?」

  セルマがラーラの肩をゆすった。

 ラーラはなきだしそうな顔で、ゴンドラを見上げている。
 気球は道に迷ったように、雲の下でただよったままだった。
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