【完結】転生令嬢は、婚約破棄されて毒草令嬢と追放されたのに、冷徹辺境伯に寵愛される。

朝日みらい

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第5章 断罪と追放

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 それは、華やかな舞踏会の夜だった。

王宮の大広間に響く優雅な音楽と、ドレスの裾が揺れる音。

貴族たちの笑い声の裏には、既に冷たい噂が渦巻いていた。

「ねえ、ご存知?ルアナ嬢、毒を――」

 「婚約者に毒を使うなんて、まるで劇の悪役ね」

 「でも地味なだけで悪人には見えないのに。不気味よね、そういう女」

(まさか……)

視線。ささやき。嘲笑。

ルアナはドレスの裾を握りしめ、顔を上げた。

(私は、何もしてない)

そして――舞踏会の最中、まるで劇のクライマックスのようにセドリックが前に出た。

「この場で発表がある。ルアナ・メイフィールドとの婚約は破棄する」

ざわめく会場。

驚き、戸惑い、期待するような視線の嵐。

「理由は明白だ。彼女は我が家の使用する薬草庫に毒性の高い“黒死草”を密かに持ち込み、それを密造していた。宮廷薬師としてあるまじき行為だ」

「あり得ない……!」

ルアナが声を上げようとしたが、その瞬間にはもう、空気は「断罪」の空気に染まっていた。

「証人もいる。彼女の侍女だったフィリア嬢が、この目で見たと証言している」

「……え?」

振り返ると、そこには以前から従えていた侍女――フィリアが、目を伏せたまま無言で立っていた。

「フィリア……どうしてなの……?」

フィリアは答えなかった。

代わりに、セドリックの背後に控える令嬢がくすくすと笑う。

「やはり使用人上がりの家柄では、ふさわしくなかったのね。無理があったのよ」

まるで台本のような展開だった。

いや、最初から用意されていたのかもしれない。

ルアナが拒絶できないように仕組まれた、見事な罠。

「反論はあるか?」と、国王が問いかける。

ルアナは唇を震わせた。

胸の奥から、ぐつぐつと煮える悔しさが湧き出してくる。

「私は……私は毒など作っていません!」

「証拠も証人もある以上、言い逃れは難しいな」とセドリック。

「あなたは最初から私を利用して、切り捨てるつもりだったのね……!」

「賢い君なら、もっと早く気づいてほしかったな」

その言葉に、ルアナの中で何かがプツンと切れた。

「わかったわ、セドリック侯爵。あなたのくだらない茶番に、これ以上付き合う気はないです」

「なら、私との間で交わされた婚約契約書類に解約のサインをしろ」

「まさか……署名などしたら、罪を認めたことになりますわ。だから、絶対に書くつもりはございません!」

笑った。

その場にいる全員が驚くほど、澄んだ声で。

「覚えておいて。毒草は、踏みにじられた先で、もっと強く、もっと美しく咲くのよ」

その瞬間、遠くの窓から風が吹き込み、ルアナのドレスがふわりと舞った。

まるで舞台の幕が下りるように。

笑う者たち、目を伏せる者たち、そして、どこか名残惜しそうに彼女を見つめる青い瞳――

“氷の獣”と呼ばれる辺境伯の治める領地へと追放される――。
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