【完結】転生令嬢は、婚約破棄されて毒草令嬢と追放されたのに、冷徹辺境伯に寵愛される。

朝日みらい

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第7章 辺境の地で

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ルアナが連れてこられたのは、王都から遠く離れた“フィリオノア辺境領”の小さな集落の村。

貴族たちが鼻で笑うような、魔物と吹雪と貧困の三拍子が揃った、"左遷の果て"のような地である。

「……あのぅ、ここって、ほんとに“住める”ところなんでしょうか?」

城の窓から見えるのは、凍てついた森と吹き荒れる雪風。

そして、見渡すかぎり……牛より元気のない村人たち。

「――住んでるだろう、実際に俺が」

不機嫌そうに言い放ったのは、黒髪の男――ディラン・ヴァルト、辺境伯に仕える騎士様だ。

彼は初対面の時から一貫して無表情、無口、無感情……いや、“感情が凍ってる”といったほうが近い。

(あの、もう少し“あったかい”人がよかったなあ……)

などとぼやく心の声を胸にしまいながらも、ルアナは今の自分にできることを探し始めていた。

***

「え? 咳と熱がある? それなら、これ!」

ルアナが取り出したのは、自ら調合した薬草茶。

村の子どもが熱を出したという話を聞き、即座に小屋に駆けつけたのだ。

「飲みにくいかもしれないけど……リンゴ味にしてあるから! 前世で、これで後輩の胃腸炎も撃退したんだから!」

「……ぜ、前世?」

「こっちの話!」

始めはよそよそしかった村人たちも、ルアナの手際の良さと優しさに少しずつ心を開いていった。

「ルアナ様、ありがとうございます。おかげで母の痛みが楽になったって」

「ほんとにすごい……まるで、魔女みたい……!」

「魔女はちょっと語弊が……でも、ありがと。褒めてるってことで受け取るわ!」

毎日雪を踏みしめながら村を巡り、薬草を集め、薪を分けて、焚き火の前で一緒に笑う。

気づけばルアナは、自分でも驚くほど自然に、村人たちの中に溶け込んでいた。

(なんだろう。あんなに傷ついたはずなのに……ここでは、ちゃんと“ありがとう”って言ってもらえる)

前世でも、婚約者に裏切られた今世でも、どこか“居場所”を探していた心。

それが、少しだけ満たされていく感覚があった。

***

「……貴様、余計なことはするなと、言ったはずだ」

突然、背後から聞こえた低い声にルアナがビクリと振り返ると、そこにはディランが立っていた。

「うぇっ、な、なにが余計ですか? 風邪を治すのも、薪を割るのも、みんなのためでしょ?」

「……貴様が噂になれば、村人たちが過度に期待する。こちらの管理が面倒になるだろ?」

「えっ……そ、そんな理由!?」

「それと……子どもに変なリンゴ味の薬など与えるな。魔物の匂いがつくぞ?」

「リンゴは魔物じゃありませんから!」

ついには、ルアナが叫ぶように言い返した。

だが、ディランは肩をすくめ、目を伏せてぽつりと呟いた。

「ったく……あの子が、笑っていたなら、それでいい」

「……え?」

聞き返す前に、彼はくるりと踵を返し、雪の中へと消えていった。

(……あの人、ひょっとして、ちょっと“いい人”……? いや、ないない。絶対ないな)

そう思いつつ、ルアナは小さく笑った。

今、心にほんの少し、温もりが差し込んだ。
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