【完結】転生令嬢は、婚約破棄されて毒草令嬢と追放されたのに、冷徹辺境伯に寵愛される。

朝日みらい

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第14章 初めての口づけ

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「……やれやれ、まさかお前が倒れるとはな」

その夜、グレイシアはルアナの寝室にいた。

疫病の村を駆け回り、不眠不休で薬を調合していた代償は大きかった。

無理がたたって、ルアナが高熱で倒れたのだ。

「うぅん……んん……」

寝台の上で、ルアナは汗ばんだ額に皺を寄せ、苦しげに唸っている。

薬師の彼女が、自分の体調に無頓着なことは重々承知だったが、こうして実際に倒れた姿を見るのは胸に刺さる。

「本当に……お前ってやつは……」

ぬるま湯で絞った布を額に当て、グレイシアはそっと息をついた。

こんな夜更けに、伯爵自ら看病していると知れたら、屋敷の使用人たちが腰を抜かすだろう。

「寝言でも、毒の話をするとは……どれだけ薬草が好きなんだ」

ふと、ルアナが布団を握る手に力を込めた。

「……ここに……いて……ください」

その囁きは、まるで夢のなかで誰かを探す子どものようだった。

グレイシアの胸が、ぎゅう、と軋んだ。

ああ、これほどまでに誰かを愛しく思うなど、思ってもみなかった。

彼はゆっくりと身をかがめ、ルアナの額にそっと唇を落とした。

ほんの一瞬。触れたか触れないかの、淡いキス。

「……ここにいる。お前が呼ぶなら、いつだって」

まるで、己に言い聞かせるように呟いた。

***

翌朝。

「……あれ? あたし、昨日は……?」

「目が覚めたか。熱は少し下がった」

ルアナがぼんやり目を開けると、椅子で腕を組んでいたグレイシアが無表情のまま湯呑を差し出した。

「はい、お茶。飲め」

「……えっ、伯爵様が、わたしに……お茶を?」

「文句があるなら飲むな」

「いえいえいえ、ありがたくいただきます! なんか、すごくおいしい……って、これカモミールとレモングラス……え、ちゃんと選んだんですか?」

「使用人が入れた。俺じゃない」

「ふふっ、でも、なんだか嬉しいです。……あれ?」

ルアナがふと額に手を当てた。

「なんだろう……やけに、あたたかい夢を見た気がして……」

「気のせいだ」

「夢の中で、誰かが額にキスしてくれたような……」

「……寝言で『ここにいて』と囁いていたぞ。誰かの夢でも見ていたんだろうな」

「えっ!? そ、それを聞いてたんですか!? や、やだ、恥ずかしい……っ!」

顔を赤くして布団にもぐり込むルアナに、グレイシアは肩をすくめた。

「まったく……うるさい寝相のくせに、よく恥じらえるものだ」

だがその目は、どこか優しく細められていた。

ルアナに触れたあの夜のキス――それは、彼の心を静かに、けれど確かに変えていた。
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