【完結】転生令嬢は、婚約破棄されて毒草令嬢と追放されたのに、冷徹辺境伯に寵愛される。

朝日みらい

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第19章 新たな役職と噂

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王都の玉座の間。荘厳な緞帳が風に揺れ、王の姿がその奥にあった。

「ルアナ・メイフィールド、前に出よ」

王の声が響くと、列席していた貴族たちがざわついた。

――あれが、“地味で冴えない令嬢”だったというの?

――いや、今や“辺境の奇跡”と呼ばれているぞ。

淡い緑のドレスに身を包んだルアナは、静かに前へと進み、膝をつく。

かつて追放された令嬢とは思えない、気品と風格に満ちていた。

「汝の知識と働きは、王国に多大なる貢献をなした。よって、王立薬学局長の職を授けようと思うが……」

「恐れながら、陛下。お断り申し上げます」

その瞬間、空気が凍った。

「……なんだと?」

「私は……肩書きよりも、薬草の匂いと土の感触が恋しいのです。それに、まだ未完成の薬があります。辺境で研究を続けることが、私の望みです」

王はしばし沈黙したが、やがてふっと目を細め、微笑んだ。

「よかろう。ならば自由を許す。その代わり、時折王都に報告に来ること。……もちろん、冷酷な辺境伯を連れて」

「陛下、それは命より難しいお願いです……」

そう嘆いたのはグレイシアだった。

「私はただ静かに暮らしたいだけなのに、最近では『辺境伯は薬師令嬢に膝枕されて微笑んでいた』などという、意味不明な噂まで立っております……」

「実際、微笑んでましたよね? しかも、耳が赤くなってました」

「ルアナ、それは絶対に王の前で言うことではない……!」

貴族たちの間からくすくすと笑いが起こる。

中には、真顔で「耳赤かったのか」とメモする女官までいた。

「ふむ、では“薬師に溺愛されし辺境伯”として、王国の新しい伝説になってもらおうか」

「……陛下、せめて称号は正式なものに」

「では、“地味な薬師を溺愛している冷酷な辺境伯”でどうだ?」

「もっと悪化している!!」

そんなやりとりの中、ルアナはそっと笑った。

かつて涙を流したこの地で、今、彼女は愛され、必要とされている――そのことが何よりの誇りだった。

「……行きましょう、グレイシア様。辺境には、まだ私たちを待っている人たちがいます」

「そうだな。そして……お前の笑顔も、まだ俺の隣で見たい」

「……うまいこと言っても、噂は止まりませんよ?」

「構わん。いっそ、“妻には頭が上がらない辺境伯”でもよい」

「じゃあ……本当に、妻になる日も近いですね?」

「……ルアナ、今のは反則だ」

そんなやり取りのあと、二人は王都を後にした。

薬と、希望と、噂を背負って――。
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