【完結】転生令嬢は、婚約破棄されて毒草令嬢と追放されたのに、冷徹辺境伯に寵愛される。

朝日みらい

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第20章 グレイシアの決意

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都からの長い旅を終え、久しぶりに帰ってきた辺境の館には、馴染み深い草木の匂いと静けさが満ちていた。

どこかほっとする感覚――それはまるで、家に帰ってきたかのような温もりだった。

「はぁ……やっぱりここの空気が一番ですね。王都は香水と陰謀の匂いで頭が痛くなりました」

「陰謀は香るのか……?」

「嗅覚鋭いんですよ、薬師ですから」

ルアナはくすっと笑いながら、旅装を解いていた。

グレイシアはその姿を少し離れた場所から見つめていたが、やがてふっと息を吐くと、まるで覚悟を決めたように歩み寄った。

「ルアナ」

「はい?」

その声音が、いつもの“冷酷な辺境伯”のそれではなく、どこか震えるような柔らかさを含んでいたから、彼女は思わず振り向いた。

「都で……いろいろ考えた」

「……はあ、都って、確かに考え込むにはいい場所ですよね。刺客とか、騎士団とか、偽の婚約破棄契約書とか、いろいろ思い出が――」

「おまえは黙って、聞け」

「……はい」

ルアナがぴしっと口を閉じたのを見て、グレイシアは静かに言葉を続けた。

「俺は、正式な求婚も、婚約の証も、今はまだ持っていない。けれど……」

彼は深く息を吸い、真っ直ぐに彼女を見つめた。

「このまま、俺のそばにいてくれ。側にいて、笑っていてくれ。おまえの笑顔が、俺の生きる理由だ」

ルアナは目をぱちぱちと瞬かせた。

まるで今、薬草が空から降ってきたかのような驚きの顔で。

「えっ……い、今のって、告白ですか?」

「……ああ、たぶん、そういう部類だ」

「“たぶん”って……え、いや、告白ってもっとこう、華やかで、詩的で、バラの花束と甘い言葉と……え、ええと……」

「ルアナ、顔が赤い」

「うるさいですっ!」

グレイシアは不器用に笑った。

そして、照れ隠しに口を尖らせるルアナの前に一歩近づき、そっとその手を取った。

「俺は、正式な形で迎えたい。そのときはちゃんと、式も、指輪も、すべて整えて――おまえを、この城の、俺の人生の中心に据える」

「……今のは、ちゃんとしてました。うん、100点です」

「そうか」

「でも……今日のところは、仮合格でいいですか?」

ルアナはゆっくりと頷きながら、彼の手をぎゅっと握り返した。

「側にいます。あなたが望むなら、私は……ずっと、ここにいます」

グレイシアの胸に、ほっとしたような、しかし静かに燃えるような感情が広がった。

彼はその額にそっとキスを落とす。

「……ありがとう、ルアナ」

「……次は、ちゃんと唇にもくださいね」

「っ、ルアナ……!」

「ふふ、顔が真っ赤です。辺境伯様、可愛いですね」

「だから、おまえは油断ならんと言ったんだ……!」

二人の笑い声が夜空へと溶けていく。

静かで穏やかな辺境の夜に、確かな想いと、未来への約束が刻まれた――。
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