【完結】転生令嬢は、婚約破棄されて毒草令嬢と追放されたのに、冷徹辺境伯に寵愛される。

朝日みらい

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第22章 隣に並ぶ人として

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辺境伯爵家の食堂は、今夜も静かながら温かな灯りに包まれていた。

天井の梁に吊るされたランプが、長いテーブルに柔らかな光を落とし、銀器と陶器の縁を優しく照らしている。

だが――

「…………」

その晩餐は、明らかに“いつもと違う空気”に包まれていた。

なぜなら、グレイシアの隣の椅子に、ルアナが座っていたからだ。

「えっ、本当に、ここでいいんですか……?」

「うむ。なにか問題でも?」

「いえ、問題というか、その……今までずっと席が対角線上だったので、こう、正面衝突しそうな……」

「それは歩き方の話だろう」

そんなふうにからかいながらも、グレイシアの瞳はどこか満足げだった。

彼の右隣――かつて誰も座ることのなかったその席に、今、ルアナがちょこんと腰を下ろしている。

テーブル越しに見つめ合う距離ではなく、肩を並べて食事をとる“家族”としての距離。

使用人たちは、緊張で箸……いや、フォークを落としそうになっていた。

「……伯爵様、その、お飲み物を……」

「私がやります。もう、客人扱いじゃないんですから」

そう言って、ルアナはグレイシアのカップに静かに茶を注いだ。

辺境産のハーブティーの香りが、ふわりと立ちのぼる。

グレイシアはその様子をじっと見つめていたが、不意に口を開いた。

「ルアナ。今ここで、正式に宣言しておこう」

「え? な、なんですか?」

「君は、もはやこの屋敷の“客”ではない。君は、私の“家族”だ。これから先も、ずっと」

ルアナの手が、わずかに止まった。

心の奥で何かがじんわりと温かく広がっていく。

これまでずっと“居候”のような肩身の狭さを感じていた自分が、ようやく受け入れられた気がして。

「……それは、すごく……嬉しいです。でも」

「でも?」

「家族って、こう……時にはケンカもするものですよ?」

「望むところだ。だが、君が相手なら、どんなケンカも愉しめそうだ」

「えっ、今、ちょっとドSな顔しました?」

「……気のせいだ」

ルアナは思わず吹き出した。

使用人たちも、いつしか緊張が解けて、静かに笑みを浮かべている。

この館に、ようやく“日常の温もり”が芽生えたような気がした。

「それにしても、私、あなたの隣で食べるの、まだ慣れません。妙に落ち着かなくて……緊張するというか、目のやり場に困るというか」

「ずっと見ていて構わん。君が口に何を入れるのか、興味がある」

「うわ、それ完全に変な人の台詞!」

「変で構わない。君と同じ皿を囲めるなら、変人でも妖怪でもなる」

「じゃあ、まずは“普通の婚約者”から始めてください。妖怪はその次です」

ふたりの笑い声が、花咲く春の夜に静かに溶けていった。

こうして、グレイシアとルアナは“隣に並ぶ人”として、新たな日々を歩み始めたのだった。
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