23 / 30
第23章 魔獣討伐と守る誓い
しおりを挟む
春の空気がまだ冷たさを含んでいたある朝、辺境の村から急報が届いた。
「領内西部の森に、魔獣の影が……!」
その知らせを受けたグレイシアは、すぐさま討伐隊を編成し、自ら先頭に立って森へと向かった。
「君は屋敷で待っていろ、ルアナ」
「いやです。私、薬師ですから!後方支援くらいできます!」
「後方が“命がけ”になるとは、思わんのか……」
「それでも、あなたの役に立ちたいんです。というか、私がいないとあなた、薬も使わず突っ込むでしょ?」
「図星すぎて反論できないのが悔しい」
というわけで、グレイシアは渋々ルアナの同行を認めた。
もちろん、徹底した安全確保を条件に。
森は、ただの木立ではなかった。
根の間から吹き出す瘴気に、空気はじっとりと粘ついている。
その中を這い進むのは、山ほどもある黒い毛玉――いや、魔獣“グロウルベア”。
牙の代わりに毒針を持ち、鎧すら砕く突進力を誇る。
「皆、構えろ!囲め!」
グレイシアの号令で兵が動く。
彼はひとり、剣を構えて魔獣の真正面へと踏み出した。
「……まったく、いつも前に出るなって言ってるのに!」
遠くから見守るルアナは、腰に薬草入りの袋と、即席調合キットをぶら下げていた。
が――次の瞬間、森が震えた。
魔獣の咆哮と共に、グレイシアの身体が宙を舞う。
「グレイシア様!!」
衝撃により岩に叩きつけられた彼は、ぐったりと横たわった。
魔獣は止まらず、巨体をうねらせながら再び彼へ向かって突進してくる。
「どけぇぇぇぇえええっ!!!」
その叫び声と共に、薬草の香りが風を裂いた。
ルアナだった。
身を挺して、彼の前に飛び出すと、腰から取り出した薬草入りの袋を空中に放つ。
「この辺境名物の“カラフルガス草”の威力を――見くびらないで!!」
袋が弾けた瞬間、極彩色の煙が立ち上り、魔獣の視界を奪う。
目をシパシパさせたグロウルベアは立ち止まり、混乱の末、木に頭をぶつけてその場でぐったりした。
静寂。
「……討伐、完了?」
「え、終わったの……? あ、グレイシア!」
と、ルアナは倒れたままのグレイシアに駆け寄った。
「……目を覚まして! グレイシア!」
森の木漏れ日が二人を包み込む。
瘴気の抜けた空は、どこまでも澄み渡っていた。
「領内西部の森に、魔獣の影が……!」
その知らせを受けたグレイシアは、すぐさま討伐隊を編成し、自ら先頭に立って森へと向かった。
「君は屋敷で待っていろ、ルアナ」
「いやです。私、薬師ですから!後方支援くらいできます!」
「後方が“命がけ”になるとは、思わんのか……」
「それでも、あなたの役に立ちたいんです。というか、私がいないとあなた、薬も使わず突っ込むでしょ?」
「図星すぎて反論できないのが悔しい」
というわけで、グレイシアは渋々ルアナの同行を認めた。
もちろん、徹底した安全確保を条件に。
森は、ただの木立ではなかった。
根の間から吹き出す瘴気に、空気はじっとりと粘ついている。
その中を這い進むのは、山ほどもある黒い毛玉――いや、魔獣“グロウルベア”。
牙の代わりに毒針を持ち、鎧すら砕く突進力を誇る。
「皆、構えろ!囲め!」
グレイシアの号令で兵が動く。
彼はひとり、剣を構えて魔獣の真正面へと踏み出した。
「……まったく、いつも前に出るなって言ってるのに!」
遠くから見守るルアナは、腰に薬草入りの袋と、即席調合キットをぶら下げていた。
が――次の瞬間、森が震えた。
魔獣の咆哮と共に、グレイシアの身体が宙を舞う。
「グレイシア様!!」
衝撃により岩に叩きつけられた彼は、ぐったりと横たわった。
魔獣は止まらず、巨体をうねらせながら再び彼へ向かって突進してくる。
「どけぇぇぇぇえええっ!!!」
その叫び声と共に、薬草の香りが風を裂いた。
ルアナだった。
身を挺して、彼の前に飛び出すと、腰から取り出した薬草入りの袋を空中に放つ。
「この辺境名物の“カラフルガス草”の威力を――見くびらないで!!」
袋が弾けた瞬間、極彩色の煙が立ち上り、魔獣の視界を奪う。
目をシパシパさせたグロウルベアは立ち止まり、混乱の末、木に頭をぶつけてその場でぐったりした。
静寂。
「……討伐、完了?」
「え、終わったの……? あ、グレイシア!」
と、ルアナは倒れたままのグレイシアに駆け寄った。
「……目を覚まして! グレイシア!」
森の木漏れ日が二人を包み込む。
瘴気の抜けた空は、どこまでも澄み渡っていた。
11
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜
見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。
ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。
想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。
婚約破棄!?なんですって??その後ろでほくそ笑む女をナデてやりたい位には感謝してる!
まと
恋愛
私、イヴリンは第一王子に婚約破棄された。
笑ってはダメ、喜んでは駄目なのよイヴリン!
でも後ろでほくそ笑むあなたは私の救世主!
私、今から婚約破棄されるらしいですよ!舞踏会で噂の的です
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
デビュタント以来久しぶりに舞踏会に参加しています。久しぶりだからか私の顔を知っている方は少ないようです。何故なら、今から私が婚約破棄されるとの噂で持ちきりなんです。
私は婚約破棄大歓迎です、でも不利になるのはいただけませんわ。婚約破棄の流れは皆様が教えてくれたし、さて、どうしましょうね?
呪いのせいで太ったら離婚宣告されました!どうしましょう!
ルーシャオ
恋愛
若きグレーゼ侯爵ベレンガリオが半年間の遠征から帰ると、愛するグレーゼ侯爵夫人ジョヴァンナがまるまると太って出迎え、あまりの出来事にベレンガリオは「お前とは離婚する」と言い放ちました。
しかし、ジョヴァンナが太ったのはあくまでベレンガリオへ向けられた『呪い』を代わりに受けた影響であり、決して不摂生ではない……と弁解しようとしますが、ベレンガリオは呪いを信じていません。それもそのはず、おとぎ話に出てくるような魔法や呪いは、とっくの昔に失われてしまっているからです。
仕方なく、ジョヴァンナは痩せようとしますが——。
愛している妻がいつの間にか二倍の体重になる程太ったための離婚の危機、グレーゼ侯爵家はどうなってしまうのか。
【完結済】獅子姫と七人の騎士〜婚約破棄のうえ追放された公爵令嬢は戦場でも社交界でも無双するが恋愛には鈍感な件〜
鈴木 桜
恋愛
強く賢く、美しい。絵に描いたように完璧な公爵令嬢は、婚約者の王太子によって追放されてしまいます。
しかし……
「誰にも踏み躙られない。誰にも蔑ろにされない。私は、私として尊重されて生きたい」
追放されたが故に、彼女は最強の令嬢に成長していくのです。
さて。この最強の公爵令嬢には一つだけ欠点がありました。
それが『恋愛には鈍感である』ということ。
彼女に思いを寄せる男たちのアプローチを、ことごとくスルーして……。
一癖も二癖もある七人の騎士たちの、必死のアプローチの行方は……?
追放された『哀れな公爵令嬢』は、いかにして『帝国の英雄』にまで上り詰めるのか……?
どんなアプローチも全く効果なし!鈍感だけど最強の令嬢と騎士たちの英雄譚!
どうぞ、お楽しみください!
【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます
よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」
婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。
「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」
「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」
両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。
お姉様からは用が済んだからと捨てられます。
「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」
「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」
ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。
唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。
ここから私の人生が大きく変わっていきます。
婚約破棄ですか? どうなっても知りませんよ
天宮有
恋愛
貴族達が集まっている場で、公爵令嬢の私キャシーはドリアス王子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
理由は捏造して私を悪者にしてから、王子は侯爵令嬢クノレラを新たな婚約者にすると宣言した。
婚約破棄を受け入れた私は、王子がこれから大変な目に合うことがわかっていた。
虜囚の王女は言葉が通じぬ元敵国の騎士団長に嫁ぐ
あねもね
恋愛
グランテーレ国の第一王女、クリスタルは公に姿を見せないことで様々な噂が飛び交っていた。
その王女が和平のため、元敵国の騎士団長レイヴァンの元へ嫁ぐことになる。
敗戦国の宿命か、葬列かと見紛うくらいの重々しさの中、民に見守られながら到着した先は、言葉が通じない国だった。
言葉と文化、思いの違いで互いに戸惑いながらも交流を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる