【完結】転生令嬢は、婚約破棄されて毒草令嬢と追放されたのに、冷徹辺境伯に寵愛される。

朝日みらい

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第26章 王都の再招待

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「……また来たわね、この封蝋」

ルアナは王都から届いた分厚い封書を前に、げんなりした顔をしていた。

赤い蝋で封をされたそれは、王都からの公式な再招待状。

しかも今回は、“新たな辺境伯夫人”としての出席依頼だった。

「……うう、王都って、息がしづらいんですよね。どこを歩いても香水の匂いがして、頭が痛くなって……」

「それは君が、道端の薬草の香りに慣れすぎてるせいだ」

「それ、褒めてないですよね?」

「褒めてる。……君がそのままでいてくれる方が、王都の香水よりずっと心地いい」

グレイシアは相変わらず、さらりと照れくさいことを口にする。

ルアナは顔を赤くしながらも、「ずるい……」と呟いて招待状を握りしめた。

王都。再びその門をくぐったルアナは、以前の自分とはまるで違う存在だった。

けれど。

「まぁ、あの子……あの田舎薬師じゃない?」

「なんですって、あの地味だった令嬢が……まさか今じゃ辺境伯夫人ですって?」

「うちの坊ちゃんに、声をかけてみましょうかしら……まだ若いし、妾筋として……」

「奥様、下品ですわよ……!」

──表向きは微笑を浮かべつつも、社交界の貴婦人たちは、以前のようにあからさまな嘲笑ではなく、“取り入ろう”という熱意に満ちていた。

ルアナはというと、ずっと顔が引きつっていた。

「な、なんですかこの距離感! パーティー会場がサウナみたいになってますよ!」

「我慢しろ。……それとも、逃げるか?」

「逃げたい……!」

そんな彼女の手を、グレイシアがきゅっと握った。

その瞬間、貴族たちの注目が一気に集まる。

「……紹介しよう。私の妻、ルアナ・ファルヴァスである」

静かな声だった。けれど、誰もその言葉を聞き漏らすことはなかった。

「えっ……つ、妻……っ!?」

「べ、別にまだ式も……!」

「……花祭りの夜、誓いは交わした。私にとってそれで十分だ」

ルアナは耳まで真っ赤になった。

グレイシアは、そんな彼女の手をさらに強く握りながら、周囲の貴族たちを見回す。

「君たちがどんなに美辞麗句を並べても、彼女に近づこうとすれば、容赦はしない。……彼女の心は、私のものであり、彼女の隣は、私の居場所だ」

その声に、空気がぴんと張り詰めた。

貴族たちは、これ以上言葉を続けることができず、次第に後ずさっていく。

ルアナは、ぽつりと呟いた。

「……グレイシア様って、本当に時々、反則級にかっこいいですよね……」

「“時々”なのか?」

「いや、いっつもは調子に乗られると困るので……」

「なるほど。つまり今は褒めていいタイミングだな?」

「う……ずるい!」

そのやりとりに、周囲の貴族たちはしばし唖然としていたが、やがて、誰も口出しできなくなった。

――王都の華やかな夜。

けれど、ルアナにとって一番輝いていたのは、誰の視線よりも、グレイシアのまっすぐな言葉だった。
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