【完結】転生令嬢は、婚約破棄されて毒草令嬢と追放されたのに、冷徹辺境伯に寵愛される。

朝日みらい

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第28章 薬草園の未来

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春の陽気が辺境の地にも届き始めたある日、領内の片隅に、新しい建物が完成した。

木造のかわいらしい校舎。

周囲にはルアナが手ずから植えた薬草が、小さな芽をのぞかせていた。

「先生、これなにー?」

「それはカモミール。お腹が痛いときや、ぐずったときに効くんですよ」

「じゃあこれ、ぼくのお母さんにあげるー!」

「ふふ、優しいですね。きっと喜ばれますよ」

ルアナは、わずかに土のついた手で子どもの頭を撫でた。

白いエプロンをつけたその姿は、かつて薬草を一人黙々と摘んでいた彼女とはまるで違って見えた。

「……すっかり“先生”が板についてきたな」

声の主は、彼女の夫となったグレイシア。敷地の入口で腕を組み、どこか誇らしげに立っていた。

「もう、いつの間に来てたんですか?」

「ちょっと見に来ただけだ。“辺境の領主は今日も妻の様子を視察中”って噂されそうだが?」

「……ほんとに噂になりそうで怖いです」

ルアナは苦笑しながらも、嬉しそうに笑った。

グレイシアは手にしていた小さな壺を差し出す。

「これ、君の好きなミント。庭師たちがせっせと育てていた。……いや、たぶん“君に褒められたい”だけだったが」

「まあ……ふふ、子どもたちと一緒に植えますね。先生らしく、授業で使っちゃおうかな」

「『好きな人に褒められたくて植物を育てた男たち』。教材にはならんが、教材以上に面白そうだ」

「では“失恋の薬草”として紹介しますか?」

「やめてくれ、それは私に刺さる」

子どもたちの笑い声が響くなか、ルアナとグレイシアは並んで薬草園を見つめていた。

畝に並ぶ植物たちが風に揺れ、土の香りが鼻をくすぐる。

かつて「何もない」と言われたこの土地に、今は人々の笑顔と希望が芽吹いていた。

「君が願ったことが、こうして形になっていく。……君の夢が、皆の未来になる」

グレイシアの声は穏やかで、どこか誓いのようだった。

ルアナは彼の手をそっと握り、いたずらっぽく笑う。

「……じゃあ、次の夢は“薬草の本を出す”ことです」

「出版か。では領主として……編集長として尽力しよう」

「わあ、それじゃあ“あとがき”はあなたに任せますね。“この本に関わったすべての愛する者たちへ”とか書いてください」

「……照れるな」

「今、赤くなりました?」

「なってない。断じてなってない」

「ふふ、なりましたね。領主閣下、可愛いです」

子どもたちの声に混じって、大人たちの笑い声も、薬草園に心地よく響いた。

──静かだった辺境の地に、新しい未来が、確かに芽吹いていた。
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