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アナリスは完成した原稿を手に持つと、出版社へと出向くことにした。
幸いにも今日は休日だったため、すぐに家を出ることができた。
出版社について窓口に書類を提出してから、しばらく待たされた後、担当者のクリストファーがこちらへ向かってきた。
「はじめまして。またずいぶんと書かれましたね」
彼は爽やかな笑顔で迎えると、分厚い原稿を読み始めた。
「……これはまた、リアリティがありますね! これまでは絵空事のようにフワフワとしていた感じが、全く感じられない! むしろ、痛々しさまで感じます。主人公や彼女の周りの人物の感情表現も、素晴らしいですよ」
「ありがとうございます。実は最近、身近な出来事がありまして……」
アナリスは婚約者との婚約破棄され、男爵令嬢に嘲笑された愚痴話をした。
クリストファーは頷きながら聞いていたが、彼女が話し終えると大きく頷いた。
「なるほど……それは辛い経験をされましたね」
「ええ……でも、だからこそ書けたんですよね!」
アナリスが力強く答えると、クリストファーはもみ手をしながら、
「さて、次はどんな展開にしましょうか?」
と訊く。
「そうねえ……隣国の王太子なんかと結婚するのはどうかしら? どん底の彼女は偶然、王太子様と出会って見初められて、王太子妃として迎えられるの」
アナリスが答えると、クリストファーは顎に手を当てて考え込んだ。
「ふむ……それ、いいかもしれないですね。これまでは主人公のメイリーンは国内での恋愛でしたが、隣国のアルメリア王国が新たな舞台になれば、また文化も風習も違いますし。なにより、舞台が王宮になってスケールアップ間違いなしですねえ。しかも、王太子も登場する! これは読者に受けるかも!」
クリストファーは、興奮した様子でまくし立てる。
アナリスも、調子に乗って目を輝かせながら話を続けた。
「でしょ、でしょ! それに、隣国のイケメン金髪王子と身分違いの恋なんて素敵じゃないかしら?」
「いいですね! それ、やりましょ!」
(やったわ!)
「でしたら、さっそく新社長にこの企画を持っていきましょう! そのまま社長室の応接間までまいりましょうか? きっといいお返事をいただけると思います!」
クリストファーは、嬉しそうに言いながら立ち上がる。
(運がいいわね! 昨日は最悪だったけど、今日はトントン拍子に事が運ぶわ!)
そして、出版社の社長に会えることに興奮しながら、彼の後についていった。
幸いにも今日は休日だったため、すぐに家を出ることができた。
出版社について窓口に書類を提出してから、しばらく待たされた後、担当者のクリストファーがこちらへ向かってきた。
「はじめまして。またずいぶんと書かれましたね」
彼は爽やかな笑顔で迎えると、分厚い原稿を読み始めた。
「……これはまた、リアリティがありますね! これまでは絵空事のようにフワフワとしていた感じが、全く感じられない! むしろ、痛々しさまで感じます。主人公や彼女の周りの人物の感情表現も、素晴らしいですよ」
「ありがとうございます。実は最近、身近な出来事がありまして……」
アナリスは婚約者との婚約破棄され、男爵令嬢に嘲笑された愚痴話をした。
クリストファーは頷きながら聞いていたが、彼女が話し終えると大きく頷いた。
「なるほど……それは辛い経験をされましたね」
「ええ……でも、だからこそ書けたんですよね!」
アナリスが力強く答えると、クリストファーはもみ手をしながら、
「さて、次はどんな展開にしましょうか?」
と訊く。
「そうねえ……隣国の王太子なんかと結婚するのはどうかしら? どん底の彼女は偶然、王太子様と出会って見初められて、王太子妃として迎えられるの」
アナリスが答えると、クリストファーは顎に手を当てて考え込んだ。
「ふむ……それ、いいかもしれないですね。これまでは主人公のメイリーンは国内での恋愛でしたが、隣国のアルメリア王国が新たな舞台になれば、また文化も風習も違いますし。なにより、舞台が王宮になってスケールアップ間違いなしですねえ。しかも、王太子も登場する! これは読者に受けるかも!」
クリストファーは、興奮した様子でまくし立てる。
アナリスも、調子に乗って目を輝かせながら話を続けた。
「でしょ、でしょ! それに、隣国のイケメン金髪王子と身分違いの恋なんて素敵じゃないかしら?」
「いいですね! それ、やりましょ!」
(やったわ!)
「でしたら、さっそく新社長にこの企画を持っていきましょう! そのまま社長室の応接間までまいりましょうか? きっといいお返事をいただけると思います!」
クリストファーは、嬉しそうに言いながら立ち上がる。
(運がいいわね! 昨日は最悪だったけど、今日はトントン拍子に事が運ぶわ!)
そして、出版社の社長に会えることに興奮しながら、彼の後についていった。
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