【完結】作家の伯爵令嬢は婚約破棄をされたので、愛読者の第三王太子と偽装結婚して執筆活動に邁進します!

朝日みらい

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 アナリスは恥ずかしくなりつつも、思い切って気になっていたことを訊いてみることにする。

「でも、偽装とはいえ、殿下とわたしが結婚できるのでしょうか?  わたし、あまり目立たない令嬢ですけど……」

(それにべつに美人じゃないし……)

 すると、ラファエルは前を向いたままの状態で答えた。

「私は、そうとは思わないよ。君はめちゃくちゃ美人でかわいいし、もったいないくらい素晴らしい婚約者だ。むしろ、偽装でなく本気で妻にしたいくらいだよ!」

「うっ……!」

(今なんて……?!)

 アナリスはびっくりして、思わずラファエルの顔を見た。

 すると、彼もちらりとこちらに視線を向けた。

 すぐに視線を前に戻すが、その横顔は少し赤くなっているような気がする。

「あ、あの……光栄です……」

(お世辞でも嬉しい……)

 アナリスは、思わず笑みをこぼした。

 なんだか胸がくすぐったいような、幸せな気分になったのだ。

 その時、先方の衛兵から声が聞こえてきた。

「殿下、そろそろデイラーン公爵邸へ到着いたします。一足早く、デイラーン卿にお声をかけてまいります」

「頼む」

(いよいよね……)

 アナリスは、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 緊張が高まってくる。

 そんなアナリスの手を、ラファエルが優しく握ってくれた。

 それだけで安心感が生まれる。

(きっと大丈夫よ、だって、殿下がそばにいるもの)

 アナリスは自分自身に言い聞かせると、ラファエルと一緒に衛兵のあとを追ったのだった。


***


 デイラーン公爵邸に到着した後、すぐに応接室へと案内された。

 しばらくすると、中年の男性が現れた。

 彼はすらっとした体型で中背だが、引き締まった体つきをしており、灰色の髪を短く刈り込んでいる。

「ようこそ、おいでくださいました。アル・デイラーンです」

「アル、忙しい中、急に来てすまないな」

 ラファエルとアルは握手を交わしながら、お互いの顔を見つめ合う。

(この二人って仲がよさそうね……)

 アナリスは驚いたが、口を挟むわけにもいかないので、黙って二人のやりとりを聞いていた。

 彼はふとアナリスの方に視線を向けると、笑みを浮かべて近づいてきた。

「こちらが?」

「ああ。こちら、アナリス・キャンベル子爵令嬢。私が最も尊敬し、いとおしい女性だよ」
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