23 / 66
(23)
しおりを挟む
ラファエルが紹介すると、アナリスはスカートの裾をつまみ、お辞儀をした。
アルは彼女の前に膝をつくと、
「私はデイラーン公爵家当主のアル・デイラーンと申します。以後お見知り置きを」
と丁寧に挨拶をしてくれた。
そして立ち上がると、今度は握手を求めてきた。
「よろしくお願いいたしますね、アナリス嬢」
(わあっ……大きな手ね!)
男性にあまり免疫のないアナリスは、内心ドキドキしながら、おずおずと握手に応じる。
「はい、こちらこそ……」
(でも、どうして初対面で、わたしの名前を知っているの……? もう、計画されてたのかしら)
アナリスは疑問に思ったが、その答えを聞く前に、アルの方から話題を振ってきた。
「殿下がこうしてご婚約され、私はとても嬉しく思っておりますよ」
「そうですか……?」
「ええ。これで私も安心できます。我が国の王室で、ご婚約を拒まれていたのが、殿下だけでしたから」
アルはそう言って微笑むと、ちらりとラファエルの方を見た。
アナリスは気まずそうに、
「それはその……あのですね……」
とそれが偽装結婚であることをどうしようかと思案していると、代わりにラファエルが、
「アル、余計なことは言うな」
と釘をさすように言った。
「これは失礼いたしました」
アルがおどけた調子で言うと、ラファエルはため息をついた。
そしてアルは、アナリスに向かって声をかける。
「アナリス嬢、わかっております。あなたは『メイリーン嬢の花咲く夕べ』の作者様で、今回は取材のために偽装結婚をされるために参られたことも」
「あ……はい……」
(よかった……わかってくれてて)
「もう段取りはできています。名前は主人公のメイリーン・アダムス嬢ですよね。早速、公爵家としての身分を、仮発行させていただきます。ストーリーとしては、あなたはこの国の公爵家だが、孤児になり修道院におられたのを、わたしがお預かりしているということにいたしましょう」
アルはアナリスに向かってそう言うと、続けて説明してくれた。
「本日はまず、わたしが教会に出向いて、手続きを済ませてきます。メイドに屋敷内をご案内させますから、ゆっくりとおくつろぎください」
「ありがとうごさいます……」
アルは彼女の前に膝をつくと、
「私はデイラーン公爵家当主のアル・デイラーンと申します。以後お見知り置きを」
と丁寧に挨拶をしてくれた。
そして立ち上がると、今度は握手を求めてきた。
「よろしくお願いいたしますね、アナリス嬢」
(わあっ……大きな手ね!)
男性にあまり免疫のないアナリスは、内心ドキドキしながら、おずおずと握手に応じる。
「はい、こちらこそ……」
(でも、どうして初対面で、わたしの名前を知っているの……? もう、計画されてたのかしら)
アナリスは疑問に思ったが、その答えを聞く前に、アルの方から話題を振ってきた。
「殿下がこうしてご婚約され、私はとても嬉しく思っておりますよ」
「そうですか……?」
「ええ。これで私も安心できます。我が国の王室で、ご婚約を拒まれていたのが、殿下だけでしたから」
アルはそう言って微笑むと、ちらりとラファエルの方を見た。
アナリスは気まずそうに、
「それはその……あのですね……」
とそれが偽装結婚であることをどうしようかと思案していると、代わりにラファエルが、
「アル、余計なことは言うな」
と釘をさすように言った。
「これは失礼いたしました」
アルがおどけた調子で言うと、ラファエルはため息をついた。
そしてアルは、アナリスに向かって声をかける。
「アナリス嬢、わかっております。あなたは『メイリーン嬢の花咲く夕べ』の作者様で、今回は取材のために偽装結婚をされるために参られたことも」
「あ……はい……」
(よかった……わかってくれてて)
「もう段取りはできています。名前は主人公のメイリーン・アダムス嬢ですよね。早速、公爵家としての身分を、仮発行させていただきます。ストーリーとしては、あなたはこの国の公爵家だが、孤児になり修道院におられたのを、わたしがお預かりしているということにいたしましょう」
アルはアナリスに向かってそう言うと、続けて説明してくれた。
「本日はまず、わたしが教会に出向いて、手続きを済ませてきます。メイドに屋敷内をご案内させますから、ゆっくりとおくつろぎください」
「ありがとうごさいます……」
10
あなたにおすすめの小説
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~
藍上イオタ
恋愛
「完全無欠の悪女、デステージョに転生してる!?」
家族に搾取され過労で死んだ私が目を覚ますと、WEB漫画世界に転生していた。
「悪女上等よ! 悪の力で、バッドエンドを全力回避!」
前世と違い、地位もお金もあり美しい公爵令嬢となった私は、その力で大好きなヒロインをハッピーエンドに導きつつ、自分のバッドエンドを回避することを誓う。
婚約破棄を回避するためヒーローとの婚約を回避しつつ、断罪にそなえ富を蓄えようと企むデステージョだが……。
不仲だったはずの兄の様子がおかしくない?
ヒロインの様子もおかしくない?
敵の魔導師が従者になった!?
自称『完全無欠の悪女』がバッドエンドを回避して、ヒロインを幸せに導くことはできるのか――。
「小説化になろう」「カクヨム」でも連載しています。
完結まで毎日更新予定です。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
ヒュントヘン家の仔犬姫〜前世殿下の愛犬だった私ですが、なぜか今世で求愛されています〜
高遠すばる
恋愛
「ご主人さま、会いたかった…!」
公爵令嬢シャルロットの前世は王太子アルブレヒトの愛犬だ。
これは、前世の主人に尽くしたい仔犬な令嬢と、そんな令嬢への愛が重すぎる王太子の、紆余曲折ありながらハッピーエンドへたどり着くまでの長い長いお話。
2024/8/24
タイトルをわかりやすく改題しました。
冷徹王子に捨てられた令嬢、今ではその兄王に溺愛されています
ゆっこ
恋愛
――「お前のような女に、俺の隣は似合わない」
その言葉を最後に、婚約者であった第二王子レオンハルト殿下は私を冷たく突き放した。
私、クラリス・エルデンは侯爵家の令嬢として、幼い頃から王子の婚約者として育てられた。
しかし、ある日突然彼は平民出の侍女に恋をしたと言い出し、私を「冷酷で打算的な女」だと罵ったのだ。
涙も出なかった。
あまりに理不尽で、あまりに一方的で、怒りも悲しみも通り越して、ただ虚しさだけが残った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる