【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

文字の大きさ
7 / 57

(7)皇帝の秘密の一面? 

カイゼルが部屋を出て行った後、アリシアはしばらくその場に立ち尽くしていた。

静まり返った部屋の中に、わずかに残る彼の気配が漂っているようで、心が妙に落ち着かない。  

「冷血無情の皇帝、か…。」  

そう呟いてみるものの、彼の手の冷たさや、短いながらも優しさを感じた言葉が頭を離れない。

あれが偶然だったのか、それとも彼の本当の姿が少し垣間見えたのか、答えはわからない。  

ベッドに戻ったアリシアは、なかなか眠りにつけなかった。

結局、夜明けまで刺繍をして過ごし、ようやくうとうととした頃、侍女たちがやって来た。  

「おはようございます、殿下。」  

エマをはじめとする侍女たちは、手際よく朝の支度を始めた。

アリシアはぼんやりと天井を見つめながら、昨夜の出来事を思い出し、ぽつりと呟いた。  

「ねえ、エマ。皇帝陛下って、実は猫とか好きそうじゃない?」  

エマは眉ひとつ動かさず、「猫、ですか?」と淡々とした口調で返したが、他の侍女たちはその発言に思わず吹き出しそうになっている。  

「うん、なんか冷たく見えるけど、たまに隠れて餌をやってるとか、そういう感じ!」  

アリシアは手を使って、猫に餌をやる仕草までしてみせた。

その様子に侍女たちはクスクスと笑い始めたが、エマだけは真剣な顔を崩さない。  

「それは興味深い仮説ですね。真相を確かめるには時間が必要です。」  

「確かめるって…私が確かめるの?!」  

アリシアは目を丸くし、慌てて身を起こした。

その様子に、笑いをこらえていた侍女たちはとうとう堪えきれず、声を上げて笑い出した。  

「それにしても、殿下。」

エマが静かに口を開く。

「猫好きかどうかはともかく、陛下は昨夜何か特別な行動を?」  

「え?」

アリシアは少し口ごもった。

「別に、特別ってわけじゃないけど…。」  

針に刺された指をちらりと見て、昨夜の出来事が再び思い出される。

彼の冷たい指の感触や、ハンカチを巻いてくれた手際の良さ。  

「ただ、ちょっと優しいところがあったっていうか…。でも、きっと気のせいよね!そういう人じゃないって聞いてるし。」  

「気のせいではないかもしれません。」

エマは静かに言った。

「冷たく見える人ほど、意外なところで温かさを見せるものです。」  

その言葉にアリシアは一瞬考え込んだが、すぐに首を振った。  

「いやいや、そんな都合のいい話ないって!もしかして猫の話に引っ張られてるんじゃない?」  

エマは口元に淡い微笑みを浮かべたが、それ以上何も言わなかった。  

朝の支度が進む中、アリシアは自分の心の中に芽生えた奇妙な感情に戸惑いを感じていた。

カイゼルの本当の姿を知るのは、まだまだ時間がかかりそうだ。

それでも、昨夜の短いひとときが、ほんの少しだけ彼女の心に温かい何かを残していた。  

「まぁ、これから確かめればいいわよね。」  

そう呟いて、彼女は立ち上がった。

侍女たちの笑い声が続く中、アリシアの心の中には、ほんの少しの期待と好奇心が芽生えていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さくなった夫が可愛すぎて困ります

piyo
恋愛
夫が、ある日突然、幼児の姿になってしまった。 部下の開発中の魔法薬を浴びてしまい、そのとばっちりで若返ってしまったらしい。 いつも仏頂面な夫が、なんだかとっても可愛い――。 契約結婚で、一生愛とは無縁の生活を送ると思っていたノエルだったが、姿が変わってしまった夫を、つい猫可愛がりしてしまう。 「おい、撫でまわすな!」 「良いじゃありませんか。減るもんじゃないし」 これまで放置されていた妻と、不器用に愛を示す夫。 そんな二人が、じれじれ、じわじわとお互いの距離を詰めていく、甘くて切ない夫婦再生の物語 ※本編完結済(全26話+後日談1話)、小話追加中 ※一章ほのぼの、二章シリアスの二部構成です。 ※他サイトにも投稿

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

試用期間の終わりに、伯爵様から永久雇用と指輪を渡されました

星乃和花
恋愛
植物が大好きな控えめ庭師見習いのリネットは、伯爵邸での試用期間を終える日、不安な気持ちで呼び出される。 けれど若き伯爵アルヴェインに告げられたのは、まさかの永久雇用。しかも“約束の証”として、美しい指輪まで渡されて――? 「君さえ望むなら、生涯ここにいていい」 控えめな自分が安心できるようにと考えられた、伯爵様の優しさの塊みたいな契約更新。 ……だと、リネットは本気で思っていた。 一方の伯爵様は、至って真面目に求婚のつもり。 求婚が通じたと思っている伯爵様と、 超手厚い福利厚生だと思って感激している庭師見習いの、 甘くて可愛いすれ違いラブコメディ。 (完結済ー全8話)

皇太子殿下は、幼なじみに触れていないと落ち着かない

由香
ファンタジー
幼い頃から一緒に育った皇子は、なぜか距離が近すぎる。 後ろから抱きしめられ、手を取られ、頬に触れられるのが当たり前の日常。 やがて彼は皇太子となるが――その距離は変わらないどころか、むしろ深まっていき。 「触れていないと、落ち着かない」 公の場でも離してくれない彼の執着に、周囲は騒然。 けれどその腕の中は、どうしようもなく安心してしまう。 これは、幼なじみの距離のまま始まる、逃げ場のない溺愛の物語。

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。