【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(20)不器用な贈り物 

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翌朝、アリシアがまだ眠気の残る頭で机に向かうと、小さな包みが目に入った。

淡い紙で丁寧に包まれているその包みは、机の中央にぽつんと置かれている。

彼女は思わず首を傾げた。

「これって……?」  

誰が置いていったのか分からないが、包装の仕方にどこかぎこちなさを感じる。

目の前のそれを見つめていると、昨朝の庭園での出来事がふっと頭をよぎった。  

「あの不器用な皇帝陛下、また何かしてくれたのかな?」  

ひとりごちると同時に、少し笑いが漏れる。

興味を抑えきれずにそっと包みを開けてみると、中から現れたのは昨日とよく似た素朴な焼き菓子。

そして、その中に挟まれていた小さな紙切れに気づき、彼女は手に取った。  

「食べ方は昨日教えた。自分でできるだろう。」  

それだけが書かれた、簡潔すぎる文面。

それなのに――いや、だからこそ、思わずアリシアの顔には笑みが広がった。  

「もう……本当にそっけないんだから。」  

しかし、その文字をよく見てみると、細部には妙に味わい深い不器用さが漂っていた。

文字が少し曲がっていたり、紙の端がぎざぎざになっていたり。

どうやらこれは、彼自身が書いたものらしい。  

「これ、皇帝陛下が自分で書いたの……?」  

そう思うと、自然と彼の姿が頭に浮かぶ。

きっと筆を持ちながら、無表情で真剣な顔をしていたのだろう。

彼がこういう小さな気遣いを見せるのは、どうにも想像しにくい。

でも、それだけに彼のギャップが愛おしく感じられる。  

「不器用すぎて……逆にかわいいんですけど。」  

そう呟いた瞬間、自分の言葉に驚いて、顔が少し赤くなる。  

「かわいい……?何言ってるの、私。」  

頭を振って考え直そうとするが、一度浮かんだ彼の姿はどうにも消えてくれない。

昨日の無表情な彼の目が、どこか優しさを湛えていた気がするのだ。  

アリシアは紙切れを丁寧に折りたたんでポケットにしまった。

そして焼き菓子を一口かじる。

素朴な甘さが口の中に広がり、昨日と同じく、どこか懐かしい気持ちにさせられる味だった。  

「本当に、この味が好きなんだな、あの人。」  

皇帝カイゼルが毎朝これを食べていると聞いたときは意外すぎて笑いそうになったが、こうして実際に味わってみると、なんだか納得できる気がする。

飾らず、誇張せず、ただそこにある優しさ――それが彼らしいのだろう。  

焼き菓子を頬張りながら、アリシアは机の外に目をやった。

窓の外には広がる宮廷庭園があり、朝陽の光に包まれている。

その向こうには、きっと彼がいる。

あの無表情の奥に、どんな気持ちを隠しているのだろうか?  

「少しずつ……距離が縮まっているのかな。」  

心の中でそう感じると、不思議と胸が温かくなった。

この焼き菓子はただの贈り物ではない。

彼の不器用な優しさそのものだった。

そしてそれに気づいた自分もまた、少しずつ彼を理解し始めているのだと感じた。  

もう一口、焼き菓子をかじりながら、アリシアはそっと微笑んだ。

外は穏やかな朝で、彼女の心にも同じような穏やかさが広がっていた。
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