【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(42)「ちょっとした日常」

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その日も、アリシアとカイゼルは一緒に散歩を楽しんでいた。

さわやかな風が庭園を抜け、陽の光が木々の隙間からふたりの周りに降り注いでいる。

やがて、散歩を終えたふたりは庭の片隅にあるベンチに腰掛けた。

アリシアは小さな本を手に取り、穏やかな表情でページをめくっている。

カイゼルは、そんな彼女を眺めながら、何かを言いたげな表情をしていた。 

「なあ、アリシア。」

カイゼルが不意に口を開いた。

その声は、いつもより少しだけ低く、けれどどこか照れくささが混じっている。

「はい?」

アリシアは彼の方を見ずに、ゆっくりと本のページをめくった。

声のトーンから察して、少しだけクスッと笑う。

「いや…ちょっと俺の顔、見てくれ。」

カイゼルがそう言いながら体を少し前に傾ける。

その仕草が、まるで子供のように愛らしくて、アリシアは顔を上げる。

「どうしたんですか?」

彼女は軽く首を傾げ、目を細めて柔らかい微笑みを浮かべた。

その仕草に、カイゼルの顔がわずかに赤くなる。

「いや…お前がさ、あんまり素直すぎて、俺、調子が狂うんだよ。」

そう言いながら、カイゼルはわざとらしく肩をすくめた。

「素直すぎる、ですか?」

アリシアは不思議そうに小首をかしげる。

その動作が、またカイゼルの心を軽く乱す。

「そうだよ。」

カイゼルはふいっと目をそらしながら続ける。

「普通、もっとこう、じらしたりするもんだろ?お前、俺が好きだって言ったら、『嬉しいです』とか平然と言うし…こっちが恥ずかしくなるだろ。」

「だって、本当に嬉しいんですもの。」

アリシアはカイゼルの困った顔を見て、微笑を深める。

ふと、彼の手に自分の手を重ねた。その動作に、カイゼルの表情が一瞬驚きに変わる。

「お前…なんでそんな真っ直ぐなんだ。」

カイゼルは自分の手に触れるアリシアの手をぎゅっと握り返した。

そして、顔を赤らめながらぽつりと呟く。

「ほんとに可愛すぎるだろ…」

「カイゼル様がそう言うとき、いつも照れているのがわかるんです。」

アリシアは小さく笑いながら、カイゼルの赤くなった耳をちらりと見る。

彼の照れ隠しをからかいたくなるけれど、同時に、その誠実さがたまらなく愛おしい。

「お前のせいで俺、ほんとにどうしたらいいかわからない。」

カイゼルは頭を掻きながら笑い、その笑顔が少しずつ緩んでいく。 

「でも…もっと言ってほしいんです。」

アリシアはほんの少し甘えた声で言った。

「『アリシアが好きだ』って、何度も。」

その一言で、カイゼルは完全に押し負けたように顔を覆った。

「お前、ほんとに、そういうのは反則だぞ…!」

だが、アリシアの真剣な瞳に見つめられると、逃げられないことを悟った。 

「アリシア。」

カイゼルは深呼吸をして、真っ直ぐに彼女を見つめる。

「俺、ほんとにお前が好きだ。」

その言葉を聞いて、アリシアの頬がほんのり赤く染まった。

彼女は小さく笑みを浮かべ、つぶやくように答える。

「嬉しいです、カイゼル様。」

カイゼルも照れながら笑い、次の瞬間、そっとアリシアの額に軽くキスをした。

「んっ…」

アリシアは驚きつつも、自然と目を閉じた。

そしてゆっくりと顔を上げると、ふたりの視線が交差する。

「すまん、また照れさせたか?」

カイゼルは苦笑いしながら言うが、その顔にはいたずらっぽい笑みが残っていた。

「いえ、全然。」

アリシアは彼の表情をじっと見つめる。

「むしろ…とても嬉しいです。」

その言葉に、カイゼルは再び顔を赤らめる。

そして小さく笑いながら、アリシアを優しく抱き寄せた。

「お前がそう言ってくれるなら…俺も、もっと素直になってみようかな。」

カイゼルの声はどこか照れたようで、それでも心からの愛情がこもっていた。

ふたりの距離はさらに近づき、穏やかな午後の光の中、彼らの笑顔が庭に広がっていく。
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