【完結】薔薇の仮面 ~演劇大好き少女は公爵様に溺愛されて~

朝日みらい

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第23章 陰謀の再来

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こうして、宮殿に招かれた。

その前から、私はそうなるだろうとは知っていた。  

ヴァルターが私を妃にすると宣言した瞬間から、王宮に嵐が吹き荒れることを。  

「なによ、あの女!」
「王妃になるのはこの私よ!」
「役者風情が王宮にいるなんて、聞いたことがないわ!」  

そんな貴族令嬢たちの怒りと嫉妬が燃え盛る視線を、私は毎日のように浴びている。  

いや、もうこれ火あぶりにされる前の魔女みたいな視線よ!?  

ヴァルター、あなたがサラッと「マリアを俺の妃にする」なんて宣言するから……!!!  

……まあ、それでも、私は簡単に逃げたくない。

だって、ヴァルターは本気で私を愛してくれているし、私だって――  

(って、ちょっと待って!? 今「私だって」って何よ!!?)  

自分の思考に顔を赤くしながら、私は貴族令嬢たちの集まりに向き合った。  

そして、とうとう彼女たちは行動に出たのだった。

---

「マリア様、少しお話が……」

ある日のこと、私は数人の貴族令嬢に囲まれた。  

見た目は上品な笑顔、しかし目は獲物を仕留めるハンターそのもの。 

これは絶対にロクな話じゃないわ。  

「なんでしょう?」  

できるだけ穏やかに微笑むけれど、内心は警戒レベルMAX。  

「単刀直入に言いますわ」  

令嬢の一人が扇子をパチンと閉じ、冷たい目で言い放つ。  

「あなたのような者が王妃になれるはずがないのです。ここはあなたのいる場所ではありませんわ」  

ほら来た。  

まあ、予想はしていたけれど、いざ言われるとカチンとくるものね。 

「私がいるべき場所かどうかは、ヴァルターが決めることでは?」  

「陛下はお優しいから、あなたに情けをかけているだけですわ」  

「そうよ。身の程をわきまえなさいな」  

「もしこれ以上王宮に居座るなら、それ相応の覚悟をしていただきますわよ?」  

……うん、これ、アレね。貴族令嬢流の『おまえ、消えろ』宣言ね。

でも、私は怯まない。  

「ご忠告ありがとう。でも私はヴァルターの隣にいると決めたの。……あなたたちの言葉で変わるつもりはないわ」  

「っ……!!」  

彼女たちの表情がピクッと歪む。  

「ならば、あなたがどれほど相応しくないか、この王宮で思い知らせてあげますわ!」  

バサッとドレスを翻し、彼女たちは去っていった。  

……いやもう、あからさまに敵対宣言じゃないのよ。  

私はため息をつきながら、ヴァルターのもとへ向かうことにした。  

---


ヴァルターの執務室に入ると、彼は机に座って書類を処理していた。  

……って、めちゃくちゃカッコいいんだけど!?  

王の威厳と色気を兼ね備えた佇まい、これが私の――(いや、まだ正式に妃じゃないけど!!)  

「どうした?」  

彼は私が入ってきた途端、すぐに気づいて顔を上げた。  

「ちょっとね……王宮の貴族令嬢様方に、優しく『出て行け』って言われたわ」  

「……」  

一瞬、ヴァルターの表情が変わった。  

……え、怖っ。  

「そいつらの名前は?」  

「えっ、ちょっと待って、怖い怖い! 何する気!?」  

「お前を侮辱する奴は、全員俺が排除する」  

「ダメよ、そんなことしたら余計に反感を買うわ!」  

私は慌てて彼の腕を掴む。  

「それより、私はヴァルターが信じてくれているだけで十分よ。」  

「……」  

ヴァルターの瞳が揺れる。  

そして、突然、彼は私をぐいっと抱き寄せた。  

「ヴァ、ヴァルター!?!?」  

「……出て行くな」  

彼の腕の中、鼓動が速くなる。  

「強い女は好きだ」  

「えっ、ちょっと、今そんなこと言う場面!?」  

「……だが、俺の前では強がるな。お前が泣いたら、俺は王国ごと焼き尽くすぞ」  

「いや、それはやめて!?!?」  

ヴァルターは私の髪にキスを落とす。  

「俺の妃は、お前以外に考えられない。だから、何があっても守る」  

「……本当にもう……」  

私もヴァルターの背中に手を回した。  

「……ありがとう」  

でも私は、分かっていた。王宮に吹き荒れる嵐の中では、自分らしく生きられないと…。
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