ブラックホールをふき飛ばせ

朝日みらい

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「ナオちゃん、いらっしゃい」

 ミノワさんが、あたしのランドセルを受け取りながら言った。今日はコアラの帽子だ。

「学校、楽しかった?」
「あ、はい」

 それはウソ。学校が楽しいと思ったことなんてない。友だちがいないわけじゃない。だけど、本当に何でも話せる友だちは誰もいない。

 うつむいたあたしの耳に、ミノワさんの明るい声がひびく。

「さて、今日はどの帽子にする?」
「べつに」

 あたしは首を横にふった。

 ミノワさんは笑顔でうなづきながら、ランドセルをかかえて歩き出した。

「今日は初めてだから、ここの遊び方を教えますね」

 ミノワさんの長い髪が肩で軽やかにゆれている。『ロッカー室』と札のある部屋についた。
『グネグネール』『ガックン』『ガッチン』などなど、ネームプレートに、すごくヘンテコな名前ばかりならんでる。そこに『パロパロ』と書かれたネームプレートがあった。

(たしか、廊下であったあの子だ)

「パロパロちゃんのとなりが、ナオちゃんのロッカーです。ここにお荷物を入れます。ねえ、ここでは、どんななまえにする?」


 気づくと、ネームプレートが白紙になっている。
「あの、林ナオで」

「ごめんなさい。そうじゃなくてね」

 ミノワさんは、とんがったあごをさすった。

「ここは、自分で決めなきゃダメなのよ。ここは、お家とか学校とかとは、ちがうんだからね」
「よくわからないです」

 あたしは、首をななめにして額をかいた。

「あたしは、林ナオ。それだけだし」
「でもね、それはパパとママが決めた名前だよね? 自分で決めた名前じゃないでしょう?」 

 あたしは良くわからなくて、うつむいてしまった。
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