ブラックホールをふき飛ばせ

朝日みらい

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(ミノワさんの言っている意味がぜんぜんわかんない)

「ごめん。ちょっと待っててね」 

 ミノワさんは、小走りで出ていった。あたしは、もうイヤになってロッカーの前にうずくまってしまった。

(あたしは、あたしだよ。べつによくあるナオってなまえだよ。う、う、胸が苦しくなってきた。まずい、おまじないだ)

 あたしは息をすいこんだ。

「ね、コロンだ、なご、コロンだ、ここ、コロンだ、ねコココンだ。うう、うまく言えないよ」
「どうしたの、ナオちゃん」 

 顔をあげると、キラキラしたひとみがあたしをのぞいている。カバの帽子のなぎさ先生だ。

「先生、あたし、わかんない。あたし、ヘンですか?」

 なぎさ先生は、最初真顔だったけど、すぐ顔をくしゃくしゃにした。

「はははッ。どう見たってヘンなのは私だよ。カバをかぶってるおばさんの方が、よほどヘンだ」

 なぎさ先生は、かがんであたしの肩をゆすった。

「でもね、ここはお家でも学校でもないんだから。もっと自由にしていい場所なんだぞ」
「自由?」
「そう。決められた時間に勉強をしたり、掃除をしたり、同じ給食食べて、テストやって点数つけられたり。そんなこと一切ない。学校が終わったら、あとはナオちゃんが大好きな名前で、自分のまんまで過ごす。わかるかな?」
「なんとなく」

 なぎさ先生は、パチンと指をならした。

「よし。ナオちゃんは、ハクちゃんにしよう。空紙のハク。ミノワさん、それでいいわよね?」
「はい、先生。ナオちゃん、かっこいい名前ね」

 ミノワさんも、あんしんしてほほえんでいる。

「ネームプレートはそのまま白紙でいいわ。じゃあ、わたしはもどるね。ミノワさん、そろそろおやつの時間だから案内してあげてくれる?」

 なぎさ先生は、はじかれるように部屋を出て行く。他の患者さんが待っていたんだろうな。

(先生ごめん。あたしのために)

 あたしは、あごを低くしながらミノワさんのあとに付いて歩いていった。
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