【完結】伯爵令嬢は愛する騎士の仲を引き裂く運命に逆らいます

(12)

　オカリナは日記を読み始めた。オカリナは日記に書かれている内容に驚いた。そこにはオカリナへの愛の言葉がたくさんつづられていた。

　オカリナに剣術を教えるようになってから、彼女に惹かれ始めたこと。

　彼女の素直さや明るさや才能に感心したこと。

　笑顔や涙や頑張りに心を動かされたこと。

『俺はオカリナにほめたり励ましたりすることで、彼女に役に立てることに幸せを感じていた。
　でもオカリナがエドワーズと婚約したと聞いて、悲しくなった。
　もちろんオカリナが幸せになることを願っている。だか、同時に自分が失うことが怖いんだ。
　オカリナから離れてからも、俺は彼女のことを忘れられない。
　彼女に会いたいと思った。だが、同時に自分が邪魔になることも怖い。
　もし再会できたら、彼女にしっかり自分の愛を告白しよう。それが結ばれない運命だったとしてもだ……』

　彼女はブルームが自分をずっと愛してくれたことに、涙が溢れた。


　十日程たち、オカリナの傷が癒えた頃、ブルームはオカリナを自分の部下たちに一人ずつ紹介してくれた。

　まず最初に紹介したのは、調書も担当したエリックだった。

　エリックはオカリナに笑顔で挨拶をした。

「こんにちは、オカリナさん。私はエリックと言います。ブルーム隊長の部下で副隊長をしています。隊長からあなたのことを聞きましたよ。あなたは素晴らしい女性だそうですね。隊長があなたを連れてきてくれて嬉しいです！」

　エリックはブルームの部下であり、騎士団の一員だった。若くて、背が高くて、筋肉質な体つきをしていた。金髪で、グリーンの目をしていた。彼は騎士団の制服を着ているが、ボタンを外したり、袖をまくったりして、少しだらしなく見えた。剣や盾や鎧などの武器や防具を身につけているが、汚れたり、傷ついたりしていた。

　ブルームの部下は、約50人ほどだった。彼らは、それぞれに個性や特徴があっても仲が良かった。彼らは、ブルームと一緒であれば、どんな困難にも立ち向かえると感じていた。

（みんな、ブルームのことが好きなのね。もちろん、わたしもよ。このままずっといたいわ）

　五日後目覚めると、ブルームはもう出勤した後だった。前日は街に出て、ずいぶん遅くに帰宅した。足下に包装された紙箱と手紙が置かれていた。

　包装のリボンを解き、箱を開けて、
｢わあっ！｣と、嬉しくて声を上げてしまった。

　そこにはドレス一式に、手紙には地図があって、今晩、着替えて、ここに来るように書いてあった。

　白いサテンのドレスだった。このドレスは胸元が広く開き、裾が床まで伸びていた。ドレスの色はオカリナの肌色と相性が良く、光沢のある素材は上品さを醸し出していた。

　オカリナはドレスに合わせてネックレスや赤いベルトとバッグ、靴を使用人から借りた。赤い小物は白いドレスとコントラストをつけて目立った。オカリナは首元にパールのネックレスをつけ、オカリナの顔を明るく照らした。

　オカリナは夜になるのを待って、こっそりと城を抜け出した。

　騎士団の宿舎は城から近かったが、警備員や見張り塔があった。

　オカリナは手紙に書かれた通りに、裏口から忍び込んだ。そこでブルームが待っていた。

　ブルームはオカリナを見ると、嬉しそうに笑って抱きしめた。