【完結】森で出会ったもふもふ獣は、元婚約者でした。しかも超かわいい。

第9章：魔法決戦と真実の光

「セリナ、君がいたから、僕は戻ってこられた」

　

　彼がそう言って微笑んだとき、わたしの胸の中にも確かな確信が芽生えました。

　

　偽王子が、怯えた目で後ずさりしました。

　

「……認めぬ……お前など……！」

　

　その怒りを込めた叫びも、わたしたちの祈りの前には届きませんでした。

　

　黒い魔力が最後の渦を描き、偽王子は静かに光の封印に飲まれていきます。

　グリゼルダが立っていました。

あの完璧主義で有名な公爵令嬢。
　
　でも、あの姿は、もう“人”ではありませんでした。

　背に異形の翼、瞳は紅く輝き、手のひらから炎が立ち上ります。

魔族――そう、彼女は魔族だったのです。

　

　王族を騙し、国を操り、闇を広げようとしていた、その元凶が、いま目の前に。

　

　わたしは背筋を伸ばし、右手に癒しの魔力を込めました。

聖女の光――わたしに残された、唯一の武器。

　

「信じる心が、私たちを導くのよ！」

　

　その言葉と同時に、ノアが剣を抜きました。

聖王家に伝わる“白光剣”。

彼がもふもふだった頃には考えられなかった姿に、感動で涙が……こらえないと。

　

　

「セリナ！　祈りを――今、合わせて！」

　

　言われた通り、わたしは彼の背に手を添え、祈りの言葉を唱えます。

　

　古の言霊。聖女が聖王に力を貸すときにのみ発動する、神聖結界術。

　

　光が舞いました。

炎を飲み込むほどの、真っ白な光の柱が広間を満たします。

　

「な、何だ!?　この光は――ッ！」

　

　グリゼルダの悲鳴とともに、炎が霧散し、闇が浄化されていきました。

　

　

　そして次の瞬間――ノアの姿が、さらに輝きを増しました。

　

　まるで、この世界のどこかにいる神様が、「ようやく戻ったね」と言っているかのように。

　

「セリナ、君がいたから、僕は戻ってこられた」

　

　彼がそう言って微笑んだとき、わたしの胸の中にも確かな確信が芽生えました。

　

　偽王子が、怯えた目で後ずさりしました。

　

「……認めぬ……お前など……！」

　

　その怒りを込めた叫びも、わたしたちの祈りの前には届きませんでした。

　

　黒い魔力が最後の渦を描き、グリゼルダは静かに光の封印に飲まれていきます。

　

　まるで、闇を切り裂く希望の幕引き。

　

　広間が、静けさを取り戻しました。

　

　

　◇◇◇

　

　あの日、王都の中心で始まった陰謀が、ついに終わりを迎えました。

　

　ノアは正式に王子としての名誉を取り戻し、偽王子の罪は公に裁かれ、封印された魔族の力は聖堂へと移されました。

　

　でも――まだ終わりじゃありません。

　

　王都は混乱し、傷ついた人々が癒しを必要としている。

　

　わたしは、聖女として、いや、ひとりの人間として。

　

　もう、逃げることはしません。