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第三章

第22話

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 クララは、顔を上げて、驚きの目でまじまじとセリスを見た。

 隊長は、怪訝な顔で、従者を見て言った。
 

「平民のお前が、魔獣と戦えるのか」

「いいから、貸してくれ」
 
 隊長は、身につけていた鎧や剣、盾など、武具一式を脱いで、手渡した。

 セリスは、鎧や盾には目もくれず、グローブをはめ、剣を構えた。

「鎧も付けず、こんな無防備でいいのか」

 隊長は訊いた。

「こんな重たいもの、付けて、俊敏な敵に戦えるか」

 セリスは、粗暴に言い放つと、剣先を太陽光にかざしながら言った。

「あと、2本も貸してくれ。この剣じゃ、せいぜい3体で刃こぼれするからな」

「分かった。好きにしろ」

 隊長は、他の隊員の分からホルダーに収めた2本を手に入れて差し出すと、セリスはそれを革のベルトで肩に十字で縛り付けた。

 クララは、目を見張っていた。

 今、目の前にいる従者が、これまでとは全く違う騎士憮然として立っているのが、信じられなかった。

 髪はボサボサの無精髭でもみあげがない。服装はごく質素な平民の麻布の上下を着ている。
 だが、これまでの寝ぼけた眼差しが嘘のように消え去り、眼光は鷹の目のように鋭くなっている。
 
「クララ、何ぼうっとしてる。早く、防御魔法をやれよ」
 
 そして、まさかの敬語無しの、不敬な態度! 

 でも、クララには、それに反発する気概は無かった。
 
 クララは銀杖を地面につき、跪き、呪文を唱えると、宝玉から白い光が、ふたりを包み込んだ。

 従者セレスは、牢のドアのノブに手を掛けた。

「やるぞ」
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