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第三章

第21話

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 隊長に案内されて、ふたりは不気味な牢小屋の前に立った。

 クララは、険しい顔つきで、銀杖を両手で握りしめている。

「まだ、半日しか経っていませんから、脱皮したとしても、まだ首は1、2本のはずです」

 隊長は言った。

「脱皮だって? どういう意味なんだよ」
 従者のセレスが、前のめりで訊いた。

「人間の皮膚を破いて、ヒドラの皮膚に入れ替わることだよ、従者さん」

 隊長が、身分の低い従者を見下したように言った。

「つまり、鱗に覆われて、剣ではなかなか斬れないってことだよな?」

 セリスが食い下がって訊いた。

「そうかも知れないが。我々だって、実は護衛だけで、テレス神官様しか魔獣を倒したことはないんだ」

 隊長は、困惑したように言った。

「というと、捕獲していないヒドラのチビたちが、ちまたにうろついているっていうことなのか? あのテレス神官さまはそれを知ってるのに退治しないで、貧乏人に治療ばかりしてるのかよ?」

 容赦なく、セリスは隊長に詰問した。

「奴らは、メディス家に仕える者しか襲わないからだ。そして、奴らを護衛する我々も同じだ」

 隊長は悔しそうに奥歯を噛んだまま、それきり何も言わない。

 クララは、セリスの肩をつかんだ。

「セリスさん、もう質問はいいわよ。わたしが一人で片を付けるから」

「策はあるんですか?」

「わたしは防御魔法が主なの。だから、守りながら、相手が弱ったところで攻撃を仕掛ける」

「攻撃はできるんですか?」

「もちろん。杖を槍の形に変えて、攻撃をしかけることもできるわ。その間は、防御はできなくなるけど」

 クララは、眼を伏せた。

 従者は、ふうと、吐息をはいた。そして、隊長に手を差し出した。

「君の剣を貸してくれないか。それに、革のグローブも」
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