【完結】お飾り花嫁のはずなのに、なぜか皮肉ばかり言う意地悪伯爵の溺愛が止まりません。

朝日みらい

文字の大きさ
13 / 37

(13)翌朝の小競り合い

しおりを挟む
翌朝、エリーナはキッチンで朝食の準備をしていた。

木のテーブルにはまだ夜の余韻が残り、窓から差し込む柔らかな朝の光が部屋を温かく照らしている。

香ばしいパンの香りが漂い、静かな朝の始まりを告げていた。

しかし、エリーナの頭の中には昨晩の出来事がぐるぐると回っていて、何だかぼんやりしていた。  

あの時のアルフォンスの言葉、彼の手の温もり…まだ心がその余韻に浸っているような気がした。

そんな時、後ろからふと声が聞こえてきた。

「また何かやらかしそうな顔をしているな。」  

その声に驚いて振り向くと、アルフォンスが立っていた。

彼は腕を組みながら、少しおどけたようににやりと笑っている。

「やらかしそうって、失礼ですね!ただ考え事をしていただけです。」  

エリーナは顔を赤くして言い返す。

そんな彼女を、アルフォンスは目を細めて見つめ、さらにからかうような表情を浮かべた。

「ほう、それは珍しいな。君が考え事をするとは。」  

「もう、あんまりからかわないでください!」  

エリーナはむっとして、頬を膨らませて振り返る。

すると、アルフォンスはやや肩をすくめながら、微笑んだ。

「本当に意地悪なんだから…!」  

彼女の言葉に、アルフォンスは楽しそうにクスリと笑いながら言った。  

「そう思うなら、君がその顔をどうにかしてみろ。怒る君の顔は面白すぎて、つい言いたくなる。」  

その言葉にエリーナはますます顔を赤くして、怒りを覚えるが、内心ではその笑顔に心が少し揺れ動いているのも感じていた。

アルフォンスの冷たい言葉に隠れた優しさを、彼女は少しずつ理解し始めていたからだ。

「もう知りません!」  

エリーナは背を向けて、スプーンを手に取ったものの、少しだけふっと顔を背ける。  

すると、アルフォンスは軽くため息をついて、肩をすくめた。

「朝からそんなふうに拗ねるな。お前にとって損だ。」  

「損って、どういう意味ですか?」 
 
エリーナは疑問を口にしながらも、少しだけ振り返った。

アルフォンスは腕を組んだまま、真剣な顔で言った。

「君の笑顔のほうが、私にはいい朝をくれるからな。」  

その言葉にエリーナは驚き、手に持っていたスプーンが勢いよくテーブルに落ちそうになる。

慌ててそれを支えようとしたが、心臓がドキドキと速くなっていく。

「な、なんですかそれ…!急に変なこと言わないでください!」  

エリーナは赤面しながらも、アルフォンスに背を向ける。

彼の言葉がまるで心の奥深くに響いたように、彼女の胸はドキドキと震えていた。

「変なことではない。事実だ。」  

アルフォンスの真剣な表情に、エリーナはますますどうしたらいいのか分からなくなってしまった。

そして、結局彼に背を向けたまま、深呼吸をして落ち着こうとする。

(何なの、この人…昨日から急に攻めてくるのがズルすぎる!)  

心の中で混乱しながらも、その頬には自然と微笑みが浮かんでいた。

エリーナは自分でも気づかないうちに、少しずつアルフォンスの優しさを受け入れ始めていた。

アルフォンスの行動は日に日に大胆になり、エリーナはその度に驚かされるばかりだった。

食事をしている最中、ふと彼が手を伸ばしてきて、エリーナの手を握る。

最初は驚き、動揺するエリーナだったが、彼の手の温かさに心が落ち着くのを感じた。

ある日、書類を読んでいると、アルフォンスが何気なく彼女を膝に座らせる。

エリーナは恥ずかしさと戸惑いを感じながらも、心の中でその行動が嬉しいことに気づき始めていた。

「アルフォンスさん、本当にどうしたんですか?急に…なんか、妙に甘いというか。」  

エリーナは驚きながら尋ねた。

アルフォンスはほんの少し目を細めて、くすりと笑った。

「急ではない。君が気づかなかっただけだ。」  

「うそ…!」  

エリーナは思わず反論するが、その言葉が真実であることは徐々に感じ取っていた。

アルフォンスは確かに冷たい一面を持っていたが、その中には本当の優しさが隠れている。

エリーナは、少しずつ彼の本当の気持ちに気づき始めていた。

(この人、ただ冷たいだけじゃないんだ…本当は私のことを大切にしてくれているのかもしれない。)  

そんな思いが心に広がり、エリーナはその気持ちに向き合うべきだと決意するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件

水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。 「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。

事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~

水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」 第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。 彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。 だが、彼女は知っていた。 その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。 追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。 「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」 「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」 戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。 効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。 灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。

海に捨てられた王女と恋をしたい竜王

しましまにゃんこ
恋愛
神とも崇められる最強種である竜人族の竜王フィリクス。彼の悩みはただ一つ。いまだ運命の番が現れないこと。可愛いうさぎ獣人の番といちゃいちゃ過ごすかつての冷徹眼鏡宰相を、涙目でじっとりと羨む日々を送っていた。 雷鳴轟く嵐の夜、遂に彼の耳に長年探し求めていた番の声が届く。夢にまで待ち望んだ愛する番が呼ぶ声。だがそれは、今にも失われそうなほど弱々しい声だった。 そのころ、弱小国の宿命として大国ドラードの老王に召し上げられるはずだったアスタリアの王女アイリスは、美しすぎるゆえに老王の寵愛を受けることを恐れた者たちの手によって、豪華な花嫁衣装に身を包んだまま、頼りない小舟に乗せられ、海の上を彷徨っていた。 必死に抗うものの、力尽き、海底へと沈んでいくアイリス。 (お父様、お母様、役立たずの娘をお許し下さい。神様、我が魂を身許に捧げます……) 息が途切れる最後の瞬間、アイリスは神の姿を見た。キラキラと光る水面を蹴散らし、美しい黄金色の竜が、真っ直ぐにアイリス目指してやってくる。アイリスの国、アスタリアの神は竜だ。アスタリアを作り、恵みを与え守ってくれる、偉大で優しい竜神様。代々そう言い伝えられていた。 (神様……ああ、なんて、美しいの……) 竜と目があった瞬間、アイリスはにっこり微笑み、ゆっくり意識を手離した。 今にも失われそうな愛しい命。フィリクスは自らの命を分け与えるため、アイリスの意思を確認しないまま婚礼の儀式を行うことに。 運命の番としてようやく巡り合った二人。 しかしドラード国では、海に消えたアイリスを失ったことで老王の逆鱗に触れ捕らえられたラナード王子のため、『忘れられた王女』として虐げられていたミイナが、アイリスの行方を追って旅に出る。 醜さゆえに誰にも愛されなかったミイナ。彼女もまた、竜に纏わる数奇な運命を抱えていた。 竜の溺愛と自らの使命に翻弄される立場の違う二人の王女。果たして二人の運命は? 愛の強すぎる竜人族✕愛を知らない不憫系美少女の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 作品はすべて、小説家になろう、カクヨムに掲載中、または掲載予定です。 完結保証。完結まで予約投稿済み。毎日21時に1話更新。

処理中です...