【完結】お飾り花嫁のはずなのに、なぜか皮肉ばかり言う意地悪伯爵の溺愛が止まりません。

朝日みらい

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(12)夜の会話と距離の近さ

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その夜、エリーナとアルフォンスの会話は思いのほか弾んだ。

いつもは冷たく、無表情なアルフォンスが、少しだけ心を開いたような気配を感じさせていた。

彼が自分の幼少期の話をするなんて、エリーナには予想外のことだった。

「君が信じられない顔をしているな。」  

「だって、アルフォンスさんにも子どもの頃があったなんて…なんだか想像つきません。」  

エリーナはベッドの上で膝を抱え、アルフォンスを見上げた。

彼のいつもの冷徹な表情と、今の和やかな雰囲気のギャップに、思わず目を見開く。

アルフォンスは少し驚いた様子で、珍しくくすりと笑った。  

「私が生まれた時から冷酷な大人だとでも思っていたのか?」  

「正直、少しだけ。」  

エリーナが素直に答えると、アルフォンスは額に手を当て、困ったように頭を振る。

「君には、もう少し遠慮というものを覚えてほしいな。」  

「でも、アルフォンスさんのそういうところ、ちょっと好きです。」  

思わず口をついて出たその一言に、アルフォンスの動きが止まった。

彼が自分をじっと見つめるので、エリーナは慌てて顔を赤らめた。

「…今、何と言った?」  

「えっ?いや、あの、深い意味はないですよ!ほら、話の流れで…!」  

エリーナは顔を真っ赤にして言い訳を始める。

すると、アルフォンスがクスリと口角を上げ、ゆっくりと彼女の隣に腰を下ろした。

「なら、聞き逃したことにしてやろう。」  

「そ、そうしてください!」  

エリーナがそう言いながらも、どうしても彼の近くにいると落ち着かなくなってしまう。

アルフォンスは彼女の目をじっと見つめ、その視線の強さにエリーナは思わず息を呑む。

「君は本当に、嘘をつくのが下手だな。」  

「そ、そんなことありません!」  

「いいや、顔に全部出ている。」  

アルフォンスはニヤリと笑いながら、突然、彼女の額に軽く唇を当てた。

「っ…!」  

その瞬間、エリーナは驚きで固まった。

息が止まるような感覚に、目を見開いてしまう。

しばらくの間、言葉を失っているエリーナを見て、アルフォンスは満足そうに微笑んだ。

「今のはお礼だ。君が正直だったからな。」  

「お、礼って…それは反則です!」
  
エリーナの頬が真っ赤に染まり、思わず口を尖らせる。

どうしてこんなことに…と心の中で叫ぶが、彼の余裕の表情に胸の鼓動が乱れる。

アルフォンスは肩をすくめ、軽く笑いながら言った。  

「反則ではない。ただの夫婦のスキンシップだ。」  

「夫婦の…って、そ、そんな簡単に言わないでください!」  

エリーナは顔をさらに赤くし、恥ずかしさに耐えられず、布団を引っ張って頭を隠そうとした。

だが、その動きを瞬時にアルフォンスが制止した。

「隠れるな。」  

「だ、だって恥ずかしいんです!」
  
「恥ずかしがる必要はない。君がどんな顔をしているか、全部見たいんだ。」  

彼の言葉は真剣で、どこか優しさが滲んでいる。

エリーナはその言葉に、さらに顔を真っ赤にしながらも、心がキュンとするのを感じた。

「アルフォンスさん、本当に意地悪です!」   

「そうか?私は君を甘やかしているつもりだが。」  

アルフォンスは低い声で、柔らかく言った。

その声に込められた優しさを、エリーナはしっかりと感じ取る。

たとえ意地悪だとしても、その気持ちは何だか嬉しくて、少し胸が高鳴っていた。

「意地悪だなんて…」  

エリーナはしばらく黙っていたが、心の中では彼に対する感情がどんどん強くなっていくのを感じていた。

アルフォンスがこんなに優しくなるなんて、思ってもみなかった。

でも、彼が見せる温かさには、どうしても心が反応してしまう。

「でも、ちょっとだけ嬉しいんです。」  

エリーナは小さくつぶやくと、アルフォンスはその言葉をしっかりと受け止めたように、穏やかな笑みを浮かべた。

「なら、もっと甘やかしてやろうか。」  

その言葉に、エリーナはまたも胸をドキドキさせながら、少しだけ頷いた。
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