【完結】お飾り花嫁のはずなのに、なぜか皮肉ばかり言う意地悪伯爵の溺愛が止まりません。

朝日みらい

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(15)夜の特別な約束

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その後、二人は暖炉の前で向き合って座っていた。

暖かい火の光が揺れ、部屋をほんのりと照らす。

エリーナは少し冷えた手を温めるべく、火の近くに差し出していたが、手がなかなか温まらない。

寒さに震える彼女の姿を見て、アルフォンスはふと動き、彼女の手を掴んだ。

「アルフォンスさん?」  

エリーナは驚いて顔を上げると、彼がしっかりと自分の手を握っているのに気づいた。

アルフォンスは無言で、ただ彼女の手を優しく包み込む。

その手のひらの温かさが、少しずつエリーナの冷えた指先に伝わり、心地よい温もりが広がっていった。

「お前の手は冷たいな。私が温めてやろう。」  

彼の声はいつになく優しく、エリーナはその温かさにほっと息をつく。

心の中で、温もりだけでなく、彼の優しさにふと涙が出そうになる自分に気づいて、急にドキドキしてきた。

「…こんなに優しくされると、逆に怖いです。」  

エリーナは照れくさそうに目をそらしながら言った。

アルフォンスの手のひらに自分の手が包まれているのを感じ、なんとも言えない緊張感が走る。

「怖い?私が?」  

アルフォンスは目を細め、少しだけ驚いたように彼女を見た。  

「だって、普段は皮肉ばっかりなのに、急にこんなに甘いなんて…。」 
 
エリーナは言いながらも、少しだけ彼の目を覗き込む。

その目の中には、いつもとは違う穏やかな温かさが浮かんでいて、心臓がさらに速く打つのを感じた。

アルフォンスは軽く肩をすくめ、にっこりと微笑むと、しっかりと彼女の手を握り直した。  

「そう思うなら、もっと甘えればいい。君が私に甘えてくれるなら、いくらでも優しくしてやる。」  

彼の声は真剣で、まるでこれからもっと甘えてもいいと言われているような気がした。

しかし、エリーナはその言葉を簡単に受け入れることができず、顔を赤くして首を振った。

「…そんなこと、簡単にはできませんよ。」  

「なら、練習しろ。私の膝に座るところから始めるか?」  

アルフォンスは冗談めかして言ったが、その顔にはどこか遊び心のようなものが浮かんでいた。

エリーナは驚きと照れ隠しの気持ちで、慌てて手を振り払おうとしたが、アルフォンスの腕がしっかりと彼女を引き寄せる。

「ちょ、ちょっと待って!それは本気じゃないですよね?」  

エリーナは顔を真っ赤にし、必死に反論しようとするが、アルフォンスは意地悪そうに微笑んで、さらに彼女を近づけた。

「いや、本気だ。」  

その言葉に、エリーナは呆然としながらも、どうしても彼の腕の中で逃げられず、少しだけ目をそらす。

「君が恥ずかしがるのを見ていると、どうにもこうしたくなる。」  

アルフォンスはそう言うと、彼女の髪をそっと撫でながら、楽しそうに見守る。

エリーナは恥ずかしさと共に、心の中で微妙な感情が湧き上がってくるのを感じた。

「…本当に、ずるい人。」  

彼女は小さな声で呟くと、アルフォンスはその声を聞いて満足げに笑みを浮かべた。

「ずるいとは思っていない。君が恥ずかしがる様子が、たまらなく可愛くてね。」  

アルフォンスはそのまま、そっと彼女を膝に抱えたまま、耳元で囁いた。 
 
「君がいると、私は不思議と穏やかになる。だから、もっと私に甘えていい。」  

その優しい言葉に、エリーナは胸が高鳴るのを感じ、顔を真っ赤にして思わず顔を伏せた。

「…本当に、あなたって意地悪です。」  

エリーナは恥ずかしさを隠すように、彼の胸に頭を埋めた。

彼の温かい胸の中で、震える声が少しだけ響く。

その夜、暖炉の前で過ごした時間は、二人にとって特別な記憶となった。

火の音が静かに響き、外の冷気とは裏腹に、部屋の中は温かく、心地よい静寂に包まれていた。

アルフォンスの腕の中で、エリーナは安心し、少しずつその温かさに包まれていった。

二人の心が、ほんの少しずつ近づいていることを感じながら、エリーナは穏やかな眠りに落ちていった。
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