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(四)
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その晩、セラフィーヌは眠れなかった。アルベールが隣のベッドで熟睡しているのを見計らい、彼女は寝室を出た。
手提げのランプで城を抜け出すと馬小屋に入り、スバルの手綱を引いて外に出た。
スバルの黒い瞳は、怪訝そうにセラフィーヌを観察した。彼女がいつもの乗馬服ではなく外套姿で、マントからは外行きのロングドレスと、腰には自衛のための短剣が差してあるのに気づいた。
セラフィーヌは放牧地ではなく、屋敷の城門に連れ出そうとする。
「どちらに行かれる気です?」
門衛が、セラフィーヌの前に立ち塞がった。その片方は、以前、スバルに振り落とされた兵士だった。
思わずセラフィーヌは視線を逸らした。
「どこだって、良いでしょ……」
「旦那様にはお許しは? お義母様は?」
兵士は、見下したような目つきで彼女を見て言った。
「関係ない。わたしは自由よ。いいなりなんてならない……」
「なにを、まだ学生みたいなことを言ってるんです。こんな夜中に荒馬に乗ってばかりの困った方ですね。屋敷の皆が、あなたを馬鹿にしてますけど」
兵士は、無理矢理、セラフィーヌの袖をつかみあげ、
「この屋敷の外にまで、『じゃじゃ馬令嬢』なんて、恥さらしはやめてくださいよ」
セラフィーヌは、兵士に強引に引きづられながら、
(……スバル、助けて!)
心の中で叫んでいた。
スバルは微動だにせず、セラフィーヌの瞳をのぞき込んでから、目配せした。
(なら、ぶっ飛ばしてやっていいか?)
そんな青年の声が、彼女の耳の奥に聞こえた。
(お願い!)
セラフィーヌが胸中で叫んだ通りに、スバルは見事に兵士のお尻を後ろ脚で蹴り飛ばした。
「ああっ!」
彼は2メートルほど前方に宙に飛んで行き、地面に突っ伏したまま伸びしてしまった。
(……どこにいく気だ)
スバルの口は動いていない。セラフィーヌの耳の中では、はっきり聞こえる。声質は低いが、透明感のある声だった。
セラフィーヌは、思わず息をのんだ。
スバルが彼女を真正面から見つめている。
お互いに実際に口に出さなくても、意思疎通ができるようだ。
(なぜ、わたしと話せるの?)
(……後でわけは話す。どこに行きたい?)
(実家よ。お父様、お母様、お姉さまに会いたい……)
(……分かった。早く乗れ)
セラフィーヌは逞しいスバルの背に身体を預けて、うす暗い王都の街道を走り抜けていった。
手提げのランプで城を抜け出すと馬小屋に入り、スバルの手綱を引いて外に出た。
スバルの黒い瞳は、怪訝そうにセラフィーヌを観察した。彼女がいつもの乗馬服ではなく外套姿で、マントからは外行きのロングドレスと、腰には自衛のための短剣が差してあるのに気づいた。
セラフィーヌは放牧地ではなく、屋敷の城門に連れ出そうとする。
「どちらに行かれる気です?」
門衛が、セラフィーヌの前に立ち塞がった。その片方は、以前、スバルに振り落とされた兵士だった。
思わずセラフィーヌは視線を逸らした。
「どこだって、良いでしょ……」
「旦那様にはお許しは? お義母様は?」
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「関係ない。わたしは自由よ。いいなりなんてならない……」
「なにを、まだ学生みたいなことを言ってるんです。こんな夜中に荒馬に乗ってばかりの困った方ですね。屋敷の皆が、あなたを馬鹿にしてますけど」
兵士は、無理矢理、セラフィーヌの袖をつかみあげ、
「この屋敷の外にまで、『じゃじゃ馬令嬢』なんて、恥さらしはやめてくださいよ」
セラフィーヌは、兵士に強引に引きづられながら、
(……スバル、助けて!)
心の中で叫んでいた。
スバルは微動だにせず、セラフィーヌの瞳をのぞき込んでから、目配せした。
(なら、ぶっ飛ばしてやっていいか?)
そんな青年の声が、彼女の耳の奥に聞こえた。
(お願い!)
セラフィーヌが胸中で叫んだ通りに、スバルは見事に兵士のお尻を後ろ脚で蹴り飛ばした。
「ああっ!」
彼は2メートルほど前方に宙に飛んで行き、地面に突っ伏したまま伸びしてしまった。
(……どこにいく気だ)
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セラフィーヌは、思わず息をのんだ。
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(なぜ、わたしと話せるの?)
(……後でわけは話す。どこに行きたい?)
(実家よ。お父様、お母様、お姉さまに会いたい……)
(……分かった。早く乗れ)
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