【完結】婚約は断固拒否します!~宿敵イケメンと喧嘩ばかりの私が、なぜか恋に落ちた件~

朝日みらい

文字の大きさ
4 / 10

第4章:突然の婚約話!?政略とかマジでやめてください!

しおりを挟む
「セリーナ様、ご婚約が決定いたしました」

 朝の食卓に響いた執事の声。

それは、何の前触れもなく、氷水を頭からぶっかけられたような衝撃でした。

「……はい?」

「お相手は、ベルモンド家の若き騎士、カイ様でございます」

 なぜ、どうして、いつ決まったんですか。

聞きたいことは山ほどありましたが、口はまったく動きませんでした。

 父と母は「申し分ない相手だ」と満足げ。

わたしの気持ちなど、風より軽く流されていたのです。

「セリーナ、あなたには幸せな将来が待っているの。誇りに思うわ」

 母が優しい声で言うその横で、わたしは静かにスプーンを置いて、そっと席を立ちました。

 部屋に戻ったあと、何度も深呼吸をして、それでも胸のざわめきは治まりません。

「……幸せって、なに?」

 誰もわたしの本音を聞いてくれない。

“家の名誉”“将来の安定”“良縁”――その言葉のどこにも、「わたし」という主語がいなかったのです。

 夜になって、庭へ出て、ふと塀のほうを見上げてしまったのは――ただの無意識でした。

「……お前、来ると思ってた」

 レオンは、やっぱりそこにいて。

「政略婚、ってやつか?」

「……はい。ベルモンド家の騎士様と」

「あの真面目そうなやつ?」

「そうです。顔は……まあ、整ってます。育ちもいい。条件も満点」

「――でも、好きじゃねぇんだろ」

 その言葉に、胸の奥がぐっと痛みました。

「……あたしの気持ちなんて、誰も気にしてませんから」

 塀の向こうから、レオンがゆっくり言いました。

「だったら、俺が聞いてやるよ。お前の本音、ちゃんと全部」

「……なにそれ。あんた、ヒーロー気取りですか?」

「気取りじゃねぇよ。本音で話すやつがいないなら、俺がなるしかないだろ」

 言い返せませんでした。

だって、なんだか本当に――泣きそうだったから。

「……あたしのこと、敵じゃなくて、ひとりの女の子として見てくれる人が、あんたしかいないなんて。なんか、悔しい」

「俺は、お前のこと――」

 と、そこまで言いかけて。

「なんだ、夜更けに塀越しとは風流だなぁ」

 塀の影から、もうひとりの人影がひょっこり登場しました。

「……お兄ちゃん?」

「よう、姫。相変わらず、騒がしい夜だな」

 リカルド。

わたしの従兄で、騎士団でも指折りの剣士。

そして過保護の権化です。

 彼は眉をしかめながら、レオンをぎろりと睨みました。

「まさか、婚約の件を知ったうえで、夜更けに忍び込んでるとは。アルジェント家も品位が落ちたな」

「お前に品位なんて言われたくねぇよ」

「貴様――!」

 瞬間、夜の空気が急激に冷えた気がしました。

「ふたりともやめてくださいっ!! 誰かが傷つくのなんて、もう嫌なんです!」

 わたしの叫びが、やっとふたりの空気を切り裂きました。

「セリーナ……」

「リカルド……お願い、あたしの気持ちを聞いて。婚約とかじゃなくて、“わたし”として、どうしたいかを聞いてよ」

 塀の向こうで、レオンが静かに頷きました。

「いいな、それ。自分で選ぶってやつ」

 この夜、わたしは初めて、誰かに“わたし自身の願い”を肯定された気がしました。

 でも――塀越しの会話は、もはや“平和”な秘密の時間ではいられなくなったのです。

 耳に残るリカルドの舌打ちは、まるで嵐の予兆のように。

 わたしたちの関係は、このあと、もう一度大きく揺れ始めることになるのでした――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。

ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。 ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。

ストーカーはもうしません!

エヌ
恋愛
ス、トー...カー? 自分の行為がストーカーかもしれないと気づき自重する令嬢と無表情無反応されるがままとみせかけたヤンデレ令息のお話。

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

政略結婚の果て、私は魔女になった。

黒蜜きな粉
恋愛
政略結婚で冷酷と噂される辺境伯のもとへ嫁いだ魔術師の娘フリーデ。 努力すれば家族になれると信じていたが、初夜に「君を抱くつもりはない」と突き放される。 義母の「代わりはいくらでもいる」という言葉に追い詰められ、捨てられたくない一心でフリーデは子を宿すため禁じられた魔術に手を染める。 短いお話です。

せめて、淑女らしく~お飾りの妻だと思っていました

藍田ひびき
恋愛
「最初に言っておく。俺の愛を求めるようなことはしないで欲しい」  リュシエンヌは婚約者のオーバン・ルヴェリエ伯爵からそう告げられる。不本意であっても傷物令嬢であるリュシエンヌには、もう後はない。 「お飾りの妻でも構わないわ。淑女らしく務めてみせましょう」  そうしてオーバンへ嫁いだリュシエンヌは正妻としての務めを精力的にこなし、徐々に夫の態度も軟化していく。しかしそこにオーバンと第三王女が恋仲であるという噂を聞かされて……? ※ なろうにも投稿しています。

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

処理中です...