【完結】婚約は断固拒否します!~宿敵イケメンと喧嘩ばかりの私が、なぜか恋に落ちた件~

朝日みらい

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第5章:お兄ちゃん、マジやめて!?男同士の決闘とか死亡フラグでしかない!

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「リカルドが……決闘を申し込んだって?」

 思わず口から出たその言葉に、自分でも信じられない気持ちでした。

決闘――それはただの言い争いではありません。

名誉と命をかけて剣を交える、貴族社会ではまだ残る古き慣習。

「レオン、あんた何したの!? 煽った!? 絶対煽ったでしょ!?」

「いや……まあ、ちょっとだけ?」

「ちょっとが命取りなんですよ! お兄ちゃんマジでガチで戦うつもりなんですから!」

 リカルド。

我が家の過保護騎士であり、わたし、セリーナの従兄。彼は“姫の名誉を守るためなら全力”という拗らせ騎士道精神の持ち主です。

 彼が本気で怒ったとき、それはもう地獄です。

「姫を惑わせた貴様、命をもって償え!」

「やれるもんならやってみろよ、こっちは本気だ!」

 決闘の場は、王都郊外にある古い訓練場。

日が沈み始めたころ、騎士団関係者数名の見守る中、二人の剣が交錯しました。

 ギラリと光る刃。同時に走る怒号。

わたしは隅でただ震えながら叫び続けるしかありません。

「お兄ちゃん!やめて!レオンを傷つけないで!」

「貴様こそ、姫に近づくな!」

「ねえお願い、止まって……お願い……!」

 地面を蹴って跳び上がり、斬り下ろすリカルド。

防ぎながら反撃するレオン。

何度も刃が交わり、ついに――

「ぐっ……!」

 レオンの腕に、血が滲みました。

「もうやめて!あなたが傷つくのは……いやなの!」

 その瞬間、わたしの口から、誰にも言えなかった本心があふれ出しました。

「敵だって思ってた。でも、もう違う。嫌いって思い込んでた。でも、本当は――」

 リカルドの剣が、寸前で止まりました。

 静寂が走る訓練場の中で、わたしだけが声を震わせながら告げました。

「好きなんです。レオンのこと。誰がなんと言おうと、好きなんです……!」

 その言葉に、レオンはわたしを見て、ちょっとだけ笑いました。

「……遅ぇよ。言うの、もっと早く言え」

「うるさい! 今だから言えたんです!」

 決闘は中断。

リカルドは剣を収めると、眉をひそめながら言いました。

「……お前が泣くほど好きだと言うなら、俺が言えることはもうない」

「お兄ちゃん……」

「だが、レオン。お前に姫を任せるつもりは毛頭ない。証明してみせろ。命よりも、姫の心を守れることを」

「……ああ。絶対に守る」

 そう言い切ったレオンの目は、いつもよりずっとまっすぐで。

 気づけば、わたしの心はすっかり決まっていました。

もう誰にも言い訳しない。もう“敵”のフリなんてしない。

 この気持ちは本物です。

たとえ世界が否定しても、わたしが選ぶのはレオン。

 でも、その“選択”が、すぐに嵐を呼び込むことになるだなんて。

 このときのわたしには、まだ知る由もありませんでした――。
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