【完結】婚約は断固拒否します!~宿敵イケメンと喧嘩ばかりの私が、なぜか恋に落ちた件~

朝日みらい

文字の大きさ
8 / 10

第8章:もう、戻れない。死んだ恋人と、生きるしかない私。

しおりを挟む
 レオンが斬られたあの日から、わたしは、何かが壊れたままです。

 屋敷に引き戻されたあと、誰とも話さなくなりました。

部屋の扉は閉じられ、窓もカーテンも開けず、息をすることだけが精いっぱい。

 父は政略結婚の再交渉に奔走し、母は「いつまでも塞ぎ込んでいてはお嫁に行けませんよ」とため息をつきました。

耳には入りません。

心に入る余地なんて、どこにもありませんでした。

「愛なんて……知らなければよかった」

 そう呟いたとき、鏡の中の自分は、ひどく空っぽでした。

 家の庭の花が咲いても、朝に小鳥が鳴いても、わたしの心は動きません。

 幸せそうな恋愛小説も、好きだったお菓子も、レオンと話した塀も――全部、もう過去。

“好きだった人は死にました”、そう思わないと、生きていけないから。



 でも。

 ある日、侍女が静かに差し出してきた一枚の封筒が、すべてを変えました。

「差出人不明です。屋敷の裏手に置かれていたそうで……」

 封を開けると、そこには、整った筆跡でこう書かれていました。

 > セリーナへ  
 > お前が元気でいてくれるなら、それだけで嬉しい。  
 > 俺は、生きてる。会いに行きたい。  
 > 差出人:ライオネル  

「ライオネル……?」

 心臓が、痛みを伴って跳ねました。

その名前は、逃避行の時に使っていた――レオンの旅用の偽名です。

 でも、そんなはずない。

だって彼は――目の前で、あんなふうに……

「嘘……うそでしょ……っ」

 気づいたら、涙が頬を伝っていました。

泣かないって決めたはずなのに。

泣いたら終わりだと思っていたのに。

 でも、心は勝手に信じていました。

筆跡の癖も、言葉のテンポも、わたしだけが知っている“あの人”のもの。

 その手紙を胸に抱いた瞬間、少しだけ色の戻った世界が見えました。

 わたしはもう、失われた人を思うだけの幽霊じゃない。

 この気持ちは確かにここにある。

生きている。だから、進まなきゃ。

「レオンに会いたい……!」

 それが、わたしの再生の第一歩でした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。

ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。 ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。

ストーカーはもうしません!

エヌ
恋愛
ス、トー...カー? 自分の行為がストーカーかもしれないと気づき自重する令嬢と無表情無反応されるがままとみせかけたヤンデレ令息のお話。

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

政略結婚の果て、私は魔女になった。

黒蜜きな粉
恋愛
政略結婚で冷酷と噂される辺境伯のもとへ嫁いだ魔術師の娘フリーデ。 努力すれば家族になれると信じていたが、初夜に「君を抱くつもりはない」と突き放される。 義母の「代わりはいくらでもいる」という言葉に追い詰められ、捨てられたくない一心でフリーデは子を宿すため禁じられた魔術に手を染める。 短いお話です。

せめて、淑女らしく~お飾りの妻だと思っていました

藍田ひびき
恋愛
「最初に言っておく。俺の愛を求めるようなことはしないで欲しい」  リュシエンヌは婚約者のオーバン・ルヴェリエ伯爵からそう告げられる。不本意であっても傷物令嬢であるリュシエンヌには、もう後はない。 「お飾りの妻でも構わないわ。淑女らしく務めてみせましょう」  そうしてオーバンへ嫁いだリュシエンヌは正妻としての務めを精力的にこなし、徐々に夫の態度も軟化していく。しかしそこにオーバンと第三王女が恋仲であるという噂を聞かされて……? ※ なろうにも投稿しています。

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

処理中です...