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2.前世。
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三峰汐音。
これが目の前に座っている少年の名前だ。
駅三つほど離れた中学に通う中学3年。
祖母がフランス人らしく、色素の薄い髪色と瞳をしていた。
(なるほど、クォータか。だからこれほど整った容姿なんだな)
相澤和真は視線を窓の外へ向ける。窓に面した通りは大勢の人が行きかっていた。その様子を見るともなしに眺める。
というのも、汐音が出会ってからずっと和真の顔に穴が開くのではないかと思うほど見つめ続けているからだ。
(いつまでも現実逃避していても仕方がないよな……)
諦めにも似た気分で深いため息を零す。
視線を正面に戻し、汐音の前に置かれたジンジャーエールを指さした。
「飲めば?」
汐音ははっとしたように自分の前に置かれているグラスを見た。どうやら運ばれてきたことさえ気づいていなかったようだ。いそいそとストローの袋を破る姿だけをみれば、普通の中学生に見える。
和真は気持ちを落ち着かせるため、アイスティーが半分になるほど一気に飲む。
「……さっきフィーリアって、言っていたよな?」
「はい」
「その人とおれは、どこか似ているところがあるのか?」
「似ているのではありません。あなた様がフィーリア様なのですから」
「……」
再び年相応だった表情が歓喜に酔う恍惚としたものに戻ってしまった。さらに熱を帯びた視線で見つめられる。
(どうしよう。……こいつ本当にヤバい奴だ)
思わず顔を強張らせながら、とりあえず相手は年下だと自分に言い聞かせる。再びアイスティーで喉を潤し、気持ちを切り替える。
「……因みに、フィーリアは男なのか?」
「まさか。フィーリア様は女性です」
「残念だったな。おれは男なんだ」
「? はい。存じております」
「……」
(ダメだ! もう無理! お手上げだ。……泣いていいだろうか?)
和真は思わず頭を抱える。話が続けられないどころか、そもそも会話にならないのだ。
(逃げたい。この場からさっさと逃げてしまいたい!)
「困惑されるお気持ちはお察しいたします」
心の声が届いたのか、どこか自重する声に和真は顔を上げた。少し悲し気に微笑む姿が和真の瞳に映る。
「お見受けするに、あなた様は前世の記憶がないようですね?」
「ぜんせ……?」
「はい。前世。生まれる前のことです」
一瞬、何を尋ねられているのか分からなかった。人形のようにコテッと頭を傾ける。
(……? え? 生まれる前⁈ そんな記憶なんて、普通はあるものなのか……?)
思わず眉間に皺を寄せ、考え込む。
「……おまえにはその……生まれる前の記憶があるように聞こえるんだけど?」
困惑しながら聞き返す。
「はい。私には生まれる前からの記憶があります」
「! 生まれる前の記憶があるのか⁈」
「はい。ありますし、忘れないようにしています」
(前世の記憶がある……。それも、忘れないようにしている……⁈)
ますます訳が分からなくなった和真は、疲れたように椅子に背を預けると投げやりに問う。
「じゃあ、おまえの前世って何?」
「騎士です。あなた様、フィーリア様にお仕えさせていただいておりました」
「……きし?」
「はい。そうです。私は王女様の護衛を仰せつかっておりました」
「おうじょ……? ……王女様って?」
少年が発する言葉がすぐに理解出来ず、和真は首を捻りながら相手の言葉を繰り返す。
「あなた様です。アルメリア国第三王女。それがあなた様の前世です」
汐音はあたかも当然の事のように言い切ったのだった。
これが目の前に座っている少年の名前だ。
駅三つほど離れた中学に通う中学3年。
祖母がフランス人らしく、色素の薄い髪色と瞳をしていた。
(なるほど、クォータか。だからこれほど整った容姿なんだな)
相澤和真は視線を窓の外へ向ける。窓に面した通りは大勢の人が行きかっていた。その様子を見るともなしに眺める。
というのも、汐音が出会ってからずっと和真の顔に穴が開くのではないかと思うほど見つめ続けているからだ。
(いつまでも現実逃避していても仕方がないよな……)
諦めにも似た気分で深いため息を零す。
視線を正面に戻し、汐音の前に置かれたジンジャーエールを指さした。
「飲めば?」
汐音ははっとしたように自分の前に置かれているグラスを見た。どうやら運ばれてきたことさえ気づいていなかったようだ。いそいそとストローの袋を破る姿だけをみれば、普通の中学生に見える。
和真は気持ちを落ち着かせるため、アイスティーが半分になるほど一気に飲む。
「……さっきフィーリアって、言っていたよな?」
「はい」
「その人とおれは、どこか似ているところがあるのか?」
「似ているのではありません。あなた様がフィーリア様なのですから」
「……」
再び年相応だった表情が歓喜に酔う恍惚としたものに戻ってしまった。さらに熱を帯びた視線で見つめられる。
(どうしよう。……こいつ本当にヤバい奴だ)
思わず顔を強張らせながら、とりあえず相手は年下だと自分に言い聞かせる。再びアイスティーで喉を潤し、気持ちを切り替える。
「……因みに、フィーリアは男なのか?」
「まさか。フィーリア様は女性です」
「残念だったな。おれは男なんだ」
「? はい。存じております」
「……」
(ダメだ! もう無理! お手上げだ。……泣いていいだろうか?)
和真は思わず頭を抱える。話が続けられないどころか、そもそも会話にならないのだ。
(逃げたい。この場からさっさと逃げてしまいたい!)
「困惑されるお気持ちはお察しいたします」
心の声が届いたのか、どこか自重する声に和真は顔を上げた。少し悲し気に微笑む姿が和真の瞳に映る。
「お見受けするに、あなた様は前世の記憶がないようですね?」
「ぜんせ……?」
「はい。前世。生まれる前のことです」
一瞬、何を尋ねられているのか分からなかった。人形のようにコテッと頭を傾ける。
(……? え? 生まれる前⁈ そんな記憶なんて、普通はあるものなのか……?)
思わず眉間に皺を寄せ、考え込む。
「……おまえにはその……生まれる前の記憶があるように聞こえるんだけど?」
困惑しながら聞き返す。
「はい。私には生まれる前からの記憶があります」
「! 生まれる前の記憶があるのか⁈」
「はい。ありますし、忘れないようにしています」
(前世の記憶がある……。それも、忘れないようにしている……⁈)
ますます訳が分からなくなった和真は、疲れたように椅子に背を預けると投げやりに問う。
「じゃあ、おまえの前世って何?」
「騎士です。あなた様、フィーリア様にお仕えさせていただいておりました」
「……きし?」
「はい。そうです。私は王女様の護衛を仰せつかっておりました」
「おうじょ……? ……王女様って?」
少年が発する言葉がすぐに理解出来ず、和真は首を捻りながら相手の言葉を繰り返す。
「あなた様です。アルメリア国第三王女。それがあなた様の前世です」
汐音はあたかも当然の事のように言い切ったのだった。
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