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39.生きてる。
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病室には相澤和真と三峰汐音の二人が取り残された。
途端、汐音の雰囲気がガラリと変わった。先ほどまで、優等生らしく静かな佇まいを見せていたが、今はまるで弾ける寸前のパンパンに膨れ上がった風船のような危うさを感じる。感情を押し殺したように無言のまま、ただ和真だけをじっと見つめてくる。息が詰まりそうな沈黙が流れていく。
「たひゅ、……助けてくれたのは、汐音だったんだな。ありがとう」
噛んだ。
痛みと沈黙に耐えきれなかったからかもしれない。和真は赤面しながらも引きつった笑みを浮かべて感謝の気持ちを伝える。
いつもなら直ぐに何か反応を見せるのに、汐音は何も言わない。奏が先程まで座っていた椅子に静かに腰を下ろす。
(おいおい、何か言ってくれよ~。買ったばかりのバイクの自慢でもいいからさ。居たたまれないじゃないか……)
和真の願いも虚しく、二人っきりになってから汐音は一言も言葉を発していない。まるで何かに耐える様に、ただ膝の上に置いた手を強く握りしめてる。
(……もしかして、何か怒ってる?)
かなりの間、黙り込んでいた汐音が唐突に口を開いた。
「私が居ないところで、勝手に死にかけないでください」
汐音の強い眼差しに射抜かれ、一瞬、息が止まる。
(おれは、汐音の今だに癒えていない傷をえぐるような事をしてしまったのか……)
「あなたに何かあれば、私は……」
汐音は言葉を切った。まだ言いたいことはあったはずなのに口をつぐんでしまった。
汐音の中で膨れ上がっていたものが、一気に萎んでいく。
いつのまにか目の前にいる汐音の姿は、とても頼りなげに見えた。項垂れる様子は、まるで雨に打たれながら震えている小さな子犬のようだ。
「汐音」
名前を呼べば、汐音が顔を上げた。
その顔は血の気が無く、汐音の方がよほど病人のように見える。
(フィーリアが処刑された時の事を思い出していたのか?)
和真は動かせる方の手を伸ばし、汐音の手を掴んだ。
驚いた汐音がビクっと体を揺らす。その手はヒンヤリとして冷たい。
「和真さん! かなり熱が高いです!!」
突然、オロオロと狼狽えだした汐音の姿に胸がつまる。汐音はいつも自分の事は二の次で、和真の事を最優先に考えるところがあった。
和真は掴んでいる汐音の手をそのまま強引に自分の胸の上に置く。
「!」
汐音が動きを止めた。身を固くし、大きく目を見開いている。
「……おれの心臓は元気に動いているだろ?」
優しく問えば、汐音が神妙な面持ちで頷く。
「おれは、ちゃんと生きてる。汐音。おまえが救ってくれたんだ。ありがとう」
突然、感極まった様子で、汐音が覆い被さる様に抱きついてきた。
「おい! 汐音?」
和真の肩に顔を埋めている汐音が泣いているのかと心配になり名前を呼ぶ。すると、汐音の腕の力がさらに強くなった。
「ごめんな、汐音。心配させたよな」
しがみ付いている自分より広い背を、まるで幼子でもあやす様にポンポンと軽く叩く。しばらくして顔を上げた汐音が至近距離から和真の目を覗き込んできた。その瞳に愁いはなく、いつのまにか熱を帯びていた。
「……もっと、あなたが生きておられる事を感じさせてください」
「え? それは、どういう……」
「キスをさせてください」
意味を尋ねようとした和真の声を汐音の爆弾発言が遮った。
途端、汐音の雰囲気がガラリと変わった。先ほどまで、優等生らしく静かな佇まいを見せていたが、今はまるで弾ける寸前のパンパンに膨れ上がった風船のような危うさを感じる。感情を押し殺したように無言のまま、ただ和真だけをじっと見つめてくる。息が詰まりそうな沈黙が流れていく。
「たひゅ、……助けてくれたのは、汐音だったんだな。ありがとう」
噛んだ。
痛みと沈黙に耐えきれなかったからかもしれない。和真は赤面しながらも引きつった笑みを浮かべて感謝の気持ちを伝える。
いつもなら直ぐに何か反応を見せるのに、汐音は何も言わない。奏が先程まで座っていた椅子に静かに腰を下ろす。
(おいおい、何か言ってくれよ~。買ったばかりのバイクの自慢でもいいからさ。居たたまれないじゃないか……)
和真の願いも虚しく、二人っきりになってから汐音は一言も言葉を発していない。まるで何かに耐える様に、ただ膝の上に置いた手を強く握りしめてる。
(……もしかして、何か怒ってる?)
かなりの間、黙り込んでいた汐音が唐突に口を開いた。
「私が居ないところで、勝手に死にかけないでください」
汐音の強い眼差しに射抜かれ、一瞬、息が止まる。
(おれは、汐音の今だに癒えていない傷をえぐるような事をしてしまったのか……)
「あなたに何かあれば、私は……」
汐音は言葉を切った。まだ言いたいことはあったはずなのに口をつぐんでしまった。
汐音の中で膨れ上がっていたものが、一気に萎んでいく。
いつのまにか目の前にいる汐音の姿は、とても頼りなげに見えた。項垂れる様子は、まるで雨に打たれながら震えている小さな子犬のようだ。
「汐音」
名前を呼べば、汐音が顔を上げた。
その顔は血の気が無く、汐音の方がよほど病人のように見える。
(フィーリアが処刑された時の事を思い出していたのか?)
和真は動かせる方の手を伸ばし、汐音の手を掴んだ。
驚いた汐音がビクっと体を揺らす。その手はヒンヤリとして冷たい。
「和真さん! かなり熱が高いです!!」
突然、オロオロと狼狽えだした汐音の姿に胸がつまる。汐音はいつも自分の事は二の次で、和真の事を最優先に考えるところがあった。
和真は掴んでいる汐音の手をそのまま強引に自分の胸の上に置く。
「!」
汐音が動きを止めた。身を固くし、大きく目を見開いている。
「……おれの心臓は元気に動いているだろ?」
優しく問えば、汐音が神妙な面持ちで頷く。
「おれは、ちゃんと生きてる。汐音。おまえが救ってくれたんだ。ありがとう」
突然、感極まった様子で、汐音が覆い被さる様に抱きついてきた。
「おい! 汐音?」
和真の肩に顔を埋めている汐音が泣いているのかと心配になり名前を呼ぶ。すると、汐音の腕の力がさらに強くなった。
「ごめんな、汐音。心配させたよな」
しがみ付いている自分より広い背を、まるで幼子でもあやす様にポンポンと軽く叩く。しばらくして顔を上げた汐音が至近距離から和真の目を覗き込んできた。その瞳に愁いはなく、いつのまにか熱を帯びていた。
「……もっと、あなたが生きておられる事を感じさせてください」
「え? それは、どういう……」
「キスをさせてください」
意味を尋ねようとした和真の声を汐音の爆弾発言が遮った。
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