手向け花を捧ぐーREー

井上なぎさ

文字の大きさ
48 / 102
第48話

「あたしは今の世界が嫌いだから」

しおりを挟む
この世界なんて、嫌い。
ずっと不自由な暮らしをさせられていたせいだ・・・。


ママも・・・パパも・・・結局あたしは助からないからって見放した。

ずっと、側にいて欲しかったのに・・・ほんとはどこにも行ってほしくなかったのに・・・。
だけど、お見舞いに来たのはたったの一度きり。


あたしが助けを求めていたことも知らない、無責任な親・・・。



お医者さんの見る目も・・・皆・・・皆・・あたしのこと哀れんだように見てきた・・・!

死にたくはなかったけど・・・生まれつき決まっていた運命だったから・・・仕方ないって・・割り切って・・・。

あたしは、いつも一人ぼっち・・・生死を彷徨っていた。





助からないからって、結局見殺しにされて・・・。
でも、そんなあたしを助けてくれたのは神様だった。




・・・この力がその証。



ジュリエッタは無表情でその場を行き交う人を斬っていく。人から上がる悲鳴にも耳を傾けないジュリエッタ。


この世から全ての人間を消して、神だけが住まう世界になればいい・・・。





ジュリエッタは手にしていたナイフをパッと魔法のように決して手鏡へと変わる。




この子だけが、ずっとあたしの側に居てくれた。







それはジュリエッタが一人病室で、机の上に置かれていた手鏡だった。

ジュリエッタが小さな頃からずっと近くにいてくれた愛用していた手鏡。


ジュリエッタはそんな手鏡を待ち、その鏡に自分の顔を映していれば
「ば、化け物・・・」
と、ジュリエッタが斬って血まみれで地面に倒れている1人の警官からそんな声が上がる。

ジュリエッタは手鏡から視線を外し、その男の警官に目を向ける。



「こんなことして・・・騎士団が黙っちゃいない・・・お前を・・殺しに、ここに・・・来る・・!」


ジュリエッタ「・・・そう簡単に殺されてやらないです。あたしには神様がついてるんだから」

「神はお前なんかにつかん・・・神はこの世界を見守る存在だ・・・っ
こんな・・・人々を傷つけて・・・それを神が許すと思っているのか・・・!」

ジュリエッタ「あたしの神様はこの世界を壊すコトを許してくれた。自由にしていいって・・・」







ジュリエッタもまた、容態が急変して急ぎ手術を行ったが助からずに命を落とした。
だけどそんなジュリエッタが次に目を覚ました場所は真っ白い空間だった。


そしてそんなジュリエッタの前には愛用していた手鏡が宙を浮いてジュリエッタの姿を映していた。




「ジュリエッタ。貴方はこの世界をどんな世界にしたい??今まで体が不自由だった分、思いっきり暴れたいのではないか」 


その声が確かに手鏡から聞こえ、ジュリエッタはゆっくりと体を起こす。



ジュリエッタ「暴れ、たい・・・?
でも、あたし・・・もう命長くないって・・・」

「それなら大丈夫。
ジュリエッタが我に心臓を捧げてくれれば、無限に生きれる命と、力を捧げる。
ジュリエッタ自身が思い浮かべたモノが形となり、それが武器や凶器へと変幻自在に変わる力を捧げよう」

ジュリエッタ「・・・」

「再び蘇ることができるんだ、キミは。
新たな人生を歩めるんだ。もうすっかり、体も良くなるはずさ。我がキミの病気を治そう。そのかわり、条件はあるがね。
どうだ・・・悪くない条件だろう」


ジュリエッタ「・・・この世界を・・・・壊すことになっても、いいの?
あたしは今の世界が嫌いだから」

「今まで溜め込んできた分、存分に晴らすことを許すよ。
ジュリエッタの気が済むまで、我は付き合おう」

ジュリエッタ「・・・」







私の名前はジュリエッタなんかじゃない・・・。
そんな親がくれた名前なんか、いらない。



神様からもらった、あたしの新しい名前は・・・アネモネだ・・・。
神様に心臓を捧げて力と、新しい名を授かった・・・。





あたしは、すべてを壊す為に・・・この世に甦ったの。











ジュリエッタ「ばいばい、オジサン」


ジュリエッタは手鏡を今自分が思い浮かべたナイフへと変えてその警官に向けて振り下ろそうとした。

警官の男はギュッと目を瞑ったその瞬間だ。







バチバチとナイフを持っていたジュリエッタの手に静電気が起きる。
ジュリエッタはそれに驚いてパッとナイフから手を離してしまったことで消えて手鏡へと戻る。


ジュリエッタは痛む手を押さえながらも手鏡を手に取り、空から羽ばたく羽の音を耳にして顔を空に向けた。



その空にはユニコーンに乗って向かってやってくる騎士団達の姿があった。















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...