手向け花を捧ぐーREー

井上なぎさ

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第85話

「・・・お前が騎士学校を恨む理由があんのか?」

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その頃のコチョウ達。
だんだんと黒いナニカの数は減ってきていてコチョウ達は魔法を使わず剣で対応することに。


そして全部切り倒したところで、ノウゼンカズラ達はその場に膝をつく。

生徒達に張られていたバリアもタイミングよく切れた。


「バリアが・・・」




コチョウ「・・・」

あれだけ襲ってきた数が、急に減った・・・?
リチアさんがやってくれたのでしょうか。


コチョウは息を整えると、剣を手から消して生徒達の方へと歩き出す。


「ら、ラン先輩。け、怪我人の手当てお願いします・・・っ」

コチョウ「・・・」



コチョウは指が食われた生徒へ近づきそっと優しく手を添える。だけど、
かすかな治癒の光はでているが、それは一瞬で消え去りほとんどの治療はできず出血も止めることは敵わなかった。


コチョウ「痛みは引いてますか?」

「え、あ・・・少し、和らいだ、気がします」

コチョウ「すみません。あとの治療は学校に戻ってから致しますね。今は、これで我慢してください」


コチョウは他の生徒の治療を多少だが施してあげる。
と、そんな時だった。



「騎士学校の皆さん。任務お疲れ様です」


と、そこに新しい声が響いて聞こえる。
皆の視線はそちらに向く。
そこに立っていたのはいつかの任務先で暴動を起こしたジュリエッタだった...。















ガチャンと、鍵のかかった正門の扉を開けて
キキョウは外へと出る。
するとそこで待ち構えていたフードの男。



キキョウ「騎士学校に何の用だ。
こんな夜からの訪問・・・
騎士学校に依頼という感じではないな」

「さすがは、騎士学校のキキョウさんでいらっしゃりますな。
いや・・・・シンア、と呼んだ方がいいですかな?」

キキョウ「!なぜ、私の名前を知っている」

「知ってますよ。貴方のことは。昔から。いや、貴方が産まれる前から、ですかな。」



そう言って被っていたフードをとれば、
あの人形屋の店主がそこにいた...。


















ノウゼンカズラ「・・・お前は・・・」


ノウゼンカズラはジュリエッタを見る。
ジュリエッタの顔が一瞬だけ、ディアナと重なった。


ジュリエッタ「今の貴方達なら、間違いなく仕留められそうです。魔法が使えないんでしょ?」

コチョウ「・・・なにをしたのですか」

ジュリエッタ「ジュリエッタの力です。
この力で試しに貴方達の魔法を吸い取れるかを物陰に隠れてやってみました」


と、ジュリエッタの側に姿を現した手鏡。
その手鏡を手にするジュリエッタ。


ジュリエッタ「この鏡は、あたしの思った通りに動いてくれます。だから、念じたんです。貴方達3人の魔法は厄介だから、奪ってくださいって。
それで、この鏡の中に貴方達が放った分の魔法を吸収してます。これを今、ここで放って騎士学校の皆様を一掃することだってできちゃうわけですよ」


ノウゼンカズラ「・・・お前が騎士学校を恨む理由があんのか?」

ジュリエッタ「・・・ないですよ。ないけど、あたしはこの世界が嫌だから、なにもかもめちゃくちゃになればいいって思うんです。
貴方達には分かりませんよ。あたしがこの世を旅立つ時、どれだけ寂しかったか。誰も、あたしの側に居てもくれなかった、薄情な両親だったんだから・・・・・」

ノウゼンカズラ「・・・ディアナも薄情だった、とでも言うのかよ」

ジュリエッタ「薄情ですよ。あたしが死ぬ間際も、側にいてくれない。あたしが入院してた時も来たのなんて1回程度。
毎日と言っていいほど見舞いになど来てくれなかった・・・!
あたしが死ぬ時になって、見舞いに来たってもう遅いんだってのに・・・」

アザレア「・・・ディアナはアンタのこと、気にかけていた」

ジュリエッタ「え・・・?」

ノウゼンカズラ「・・・・アイツはな、病院で寝たっきりになってるお前の為に、自ら悪い連中と手を組んで金を稼ごうとしていた。
自分には金が必要だったから。
ディアナは必死に・・・お前の病院を治す為ならば手段を選ばない。
だから・・・手を出してしまったんだ。人身売買されている子供の心臓をお前に移植しようという考えに。
心臓を取り替えれば、お前の病気は治るんだって、信じて。

だがな、それは法として禁止されている行為だ。間違った道を行こうとしてたディアナを俺たちが止めるしかなかった。
その代わりにお前の手術代に当ててやれと、俺たちがディアナに金を渡した。

今持ってんだろ?」


ジュリエッタ「!」
ジュリエッタはそっと、自らのポケットに触れる。


ノウゼンカズラ「それ、大事にしろよ」

ジュリエッタ「・・・・っ」


"お金も、ないから、大きい病院に移ることも・・・敵わなくて・・つい、臓器移植しかないって・・・。

でも・・私達が間違ってた、のよね・・・貴方の言う、とおり、親なら、側にいてあげなくちゃ・・・"


"これ・・・優しい騎士様が・・・ジュリエッタの病気が治るように・・・"






ジュリエッタ「・・・そう言えば、ママも同じようなこと言ってた・・・・。
ムカつく、なにもかも。パパも、ママも、みーんな。
死ぬ時になってあんな言葉を残して逝くとか、それじゃあ・・・残されたあたしは・・・・あたしは・・・っ」




ジュリエッタは顔を俯かせる。

手鏡のガラス部分がわずかながら光っていた。








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