視える音、聴こえる世界

Green

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見えなくたって生きられる

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「ママ...どこにいるの?」
少女は瞳から溢れ出る鮮血を拭いながら彷徨う

掠れた声が聞こえて、その方向に向かって歩いて行く




何かが足に当たったのがわかった
「わっ...なに...?」


屈んで手で確認するとーーー


「.........ママ」

すでに息絶えているだろう母の身体だった


少女の瞳から血の涙が零れ落ち、余計に母の身体を赤く染めた









これが私の7歳の時の記憶

















___



「リボン曲がってない?」

「うん!大丈夫よ」

あの出来事が起きた次の日から、私は母の姉の良子さんの家で暮らしている


「やっぱり背が高いと制服も似合うわねー」
良子さんは私の髪を直しながら言った
正直学校には行きたくない


昨日あった高校の入学式に行かなかったせいで、今日行くのが余計に緊張するのだ

いつもは美味しい朝ごはんが今日に限っては美味しく感じられない


「...休んじゃだめ?」

「だーめ!昨日ちゃんと行くって言ったでしょ?有言実行!」


中学校の時は少人数の学校だったから良かったものの、高校は何百人もの同級生がいてとてもじゃないけど馴染める気がしない

でも良子さんが引いてくれなさそうなので諦めて行くことにした







歩いて10分ほどで高校についた


人のいる教室に入って行くが嫌で早めに家を出たのが正解だった



教室に入ったのはいいが、目の見えない私は自分の席がわからない
「とりあえず探してみよう」

黒板に座席表が貼ってあったりしないかを確認した

側から見ると黒板を撫で回している変態にしか見えない

ガラッ


「.........なにしてんの」

ちょうど悪いタイミングで人が入ってきた
しかも声からすると男


「座席表を......」

私の目の焦点があっていないのを察したのか、男は小さくあーと声を漏らした


「氏名言って」

「...鷲尾 音羽」

「鷲尾、鷲尾......あった、窓側の一番後ろ」


「ありがとう」

とりあえず一番後ろだということに安心したが、この人に最悪なところを見られメンタルがやられた


なんとなく視線を感じる


「なに?」

振り返って聞いて見ると男はびっくりしたようで、


「え、なに?見えんの?」

「見えない。でも見られてるなって思ったから」


男は私の言ったことを聞くと笑った


「すご、どうやって学校きたの?」

「歩き」

「は!?あぶねーじゃん」

視覚を失うとほかの知覚が発達するようで、男の声がとてもうるさく感じた


「見えなくても、一回道のり教えてもらったからわかる......目が見えなくたって生きられる」


なぜか男は沈黙してしまった
そしてその沈黙を遮るようにして、教室のドアが開き、そこからクラスメイトがぞろぞろと入ってきた


「あ、そういえば」

そう言いながら沈黙していた男が隣の席に座った


「俺の名前八重 廻、今日から隣席だからさ」


「え...」

「よろしく」


表情が見えないから確信があるわけじゃないが、この男は何か企んでいるような気がした

















___私と同じ匂いがするから












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