視える音、聴こえる世界

Green

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親って言葉は知らねぇな

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「なぁ、見えなくても字書けんの?」

授業が始まってもこの男はずっと話しかけてくる


「...思ったより字汚いな」

初対面だというのにこの男は失礼極まりない
何様のつもりなんだ

しかもこの男からはノートをとっている音が全く聞こえない

「授業ちゃんと受けなよ」

「受ける必要ねーし」

「じゃあなんで高校入ったの」

「...まぁ、いろいろ」

少し男の声が小さくなった
やっぱり何か隠してるに違いない


「じゃあ問2をー八重!」

「うわ最悪...わかりませーん」

先生に対してもこの言い方

思いっきりあくびしてるの聞こえるし...


「そんなんで親に怒られないの?」 

少し呆れたように言うと男は、ハッと笑って言った


「親って言葉は知らねぇな」

冗談風に言ったのかもしれないが、私にはその言葉が事実だとわかった


またすぐに沈黙が訪れる


そこで会話は途切れてしまった













____



「体育出れんの?」


3時間目と4時間目の間の休み時間に、また男が声をかけてきた


「出られる。こう見えても体育の成績5だから」


「なんで!?は!?嘘だろ絶対、お前以外と面白い冗談ゆーのな」

全くもって信じていない様子


「全盲になってからの期間が長いから、体育だけは目の見える人と大して変わんないよ」

「...そういやさぁ」

男の声が小さくなった

「なに?」


「なんで目見えないの?目自体は普通に開いてるし、眼球も傷ついてないし」


「...わかんない」

「病気とか?」

「病気ではない...はず。小さい頃、家に何かが入ってきて、お母さんが何かに引っ張られてって、私が止めようとしたら...目から急に血が溢れてきたの」


それを言った途端、男の雰囲気が変わった

真夏で暑いはずの教室が、冬の寒さに変わった気がした


「あー.........やっぱりか、お前が...」
男の低い声が刺さる


男は何か心当たりがあるようだった

心臓はありえないほどに早くなっている


「なに...?教えてよ!」

「あー次移動だぞ、教室わかんないだろ?ついてこいよ」

「はぐらかさないでよ!」

そう言っても男はスタスタと歩いて言ってしまう




「放課後になったら教えてやる」

















____嫌な予感がした
























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