2 / 42
第1話 晴天の下に始まる平穏
しおりを挟む自宅の庭に寝転びながら美しく晴れた空を見上げている。
何の変哲もない、穏やかな一日の始まり。
平和そのものを象徴するような静けさの中で、僕はお気に入りの木の木陰で読書にふける。
「今日は1日、ゆったりと過ごそう......」
そう思っていると、
「ルーク。昼食を食べましょう?」
声の方に目を向けると、薄紫色の長髪をなびかせる部屋着姿の美少女が立っている。
彼女はルシア、僕の嫁だ。どうやら彼女は昼食を用意を終えて、僕を呼びに来たようだ。
「りょーかい。ここで食べない?」
「最近この小屋を使っていなかったものね。なら机と椅子を持ってくるわ。」
「ありがと。」
広大な草原に建つこの小屋は本邸から約1キロ近く離れており、以前住んでいた家でもある。
今住んでいる場所との間に遮蔽物がないため、草原の向こうに本邸がぽつんと見える。
ルシアに昼食を持ってこさせるのは少し気が引けるが、こんな爽やかな日には動きたくない。
彼女が持ってくる間、再び空を眺めて――
「お待ちどうさま。」
彼女は驚くほど早く戻ってきた。僕らは1キロ程度なら刹那の間に移動できる。
余韻を楽しむ時間もなかなか取れないが、それは僕ら神族が強大な力を持つ証拠でもある。
ルシアは収納魔法から熱々のシチューを取り出し、小屋の外に設置した小さなテーブルに並べ始めた。
「相変わらず凄まじい魔力操作技術だね。収納空間内で液体を溢さないようにするなんて。」
「戦闘中は無理。集中できる時だけよ?それと......あなたに教わったんだけど......」
そうだ僕が彼女に教えたのだった。
液体を皿ごと収納魔法に包含するなんて、我ながらくだらない技術を磨いたものだ。
普通に容器に詰めればいいだけの話なのだから......
「感謝してね、このルーク様に。」
「はいはい……早く食べましょう。魔力がもったいないわ。」
僕らは昼食を食べ始めた。
机に並ぶのはビーフシチュー、固めのパン、生野菜のサラダという昼食らしからぬ組み合わせだ。
何も考えずにあり合わせでテキトーに食事を作ったのだろう。
「ルークは今日休み?」
「そう。久々のオフだよ!本でも読んで過ごすつもり。君は?」
「これから仕事なのよ......とある銀河の太陽系にある地球っていう惑星を視察するの。」
ルシアは惑星の監視し、惑星文明のバランスを調整する仕事をしている。
今日は新しく担当する惑星の視察を行うらしい。
「あれ管轄が変わったの?地球ってどんな惑星?」
「カルダシェフスケールで1以下の文明よ。危険はないから安心して。」
カルダシェフスケールは文明の発達レベルを表す指標だ。1以下でも相当発展している。
文明がない惑星も多い中、文明が存在するというだけでそれは注目に値する。
「あそこ僕の記憶ではトカゲみたいな生き物が這いずりまわってたような……」
「ルーク?それいつの話よ......」
僕らは神族と呼ばれているが、厳密にはそう呼ばれているだけで神ではない。
詳しい話はいいとして......僕らの寿命はほぼ無限に等しい。
僕は現在5億歳なのだが、同族の中では若い部類に入る。
天上神界のお偉いさんの中には、幾つもの宇宙の誕生に立ち会った神もいるくらいだ。
そんな他愛もない話をしながら、昼食を終え僕達は2人で読書をしている。
隣で読書をしているのではなく、僕の体を背もたれにし腕の中で同じ本を読んでいる。
いわば座りバックハグだ。
「これはどういう意味なの?」
「これはね。僕の解釈だとーー」
お互い読むペースがほとんど同じなので、こうして読みながら話し合いができる。
しかしルシアは本の内容にはさほど興味がないようだ。
彼女はシャイなので、ハグの口実にしているだけなのだろう。
「な......なによ。」
「ん~?別に?共有感覚で何となく分かってるんじゃないの?」
「ぁぅ......」
「素直に言えばいいの。」
顔を真っ赤にしながら、必死に本を読んでいるフリをしている嫁は何とも愛らしい。
そうして瞬く間に時間が過ぎていき、遂にルシアが出発する時間になってしまった。
「そろそろ時間ね。行ってくるわ。」
「どうやって行くの?銀河間移動用の魔導船?」
ルシアはニコッと笑って言い放った。
「飛んでいくわ。」
「え?と、飛ぶ??長距離転移魔術とか魔道具とか?」
「飛行魔術で行くの。長距離転移は景色を楽しめないから。」
確かにルシアなら可能だろう。彼女は神族の中でも特に魔力が多いから。
「じ、じゃあ、気をつけてね。」
僕がそう言うとルシアの体を淡い光が包み込んだ。
そして彼女の服は右肩だけを覆うマントのついた紫色の衣服に変化する。
こんな事を考えるのは悪いが......
今の服を着たまま、宇宙空間を爆速飛行する嫁の姿は想像するだけでシュールだ。
「じゃあ、行ってくるね。夕食は外で何か食べておいて。」
「いってらっしゃい。」
ルシアは小屋から少し離れた場所に移動し超高速で飛んで行った。
衝撃波は軽減されているものの、僕の髪型を乱すほどの突風が吹き荒れた。小屋は念の為、結界魔術で保護しておいた。
「……さて、本を読もう。」
本は良いものだ。僕は生前から知識欲が強く、新しいものを知るために本を読むのが好きだ。
もちろん経験や冒険も大好きだから、未知で溢れているこの世界は探究心を大いにくすぐられる。
近づくことさえ禁止された宇宙に浮かぶ巨大な門。
別次元に隔離された未開の世界。
現代でも再現不可能な特殊技術。
果てにいるとされる異次元の存在。
実在さえ確認されていない、この天上神界を建界した初代全神王。
そうした未知が僕の知識欲を刺激する。いつかこの目で見たい、知りたい!そう思えてくる。
そうして本を読んでいるうちに3時間近く経過した。1日は53時間。残り25時間を有効に活用しなければ。
「平和だ……空も綺麗だな。明日も休みだから夕食は抜きだな。どうせ僕らは食べなくても死なないんだし。」
そんな独り言を呟いていた時、僕と全く同じ色の深緑の長髪をたなびかせるロリが近づいてきた。
「おにぃ、招集。」
僕は予感した。平和な休日の終わりを......
「主人公:ルーク・ゼレトルス」「ルシア・ゼレトルス」のイメージイラストを公開します
0
あなたにおすすめの小説
タイム連打ってなんだよ(困惑)
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」
王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。
パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。
アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。
「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」
目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?
※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。
『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~
イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の取材中、異世界の大地の女神と接触する。
半ば強制的に異世界へと転生させられた彼は、惑星そのものと同化し、“星骸の主”として不死の存在へと変貌した。
だが女神から与えられた使命は、この世界の生命を滅ぼし、星を「リセット」すること。凛人はその命令を、拒否する。
彼は、大地の女神により創造された星骸と呼ばれる伝説の六英雄の一人を従者とし、世界を知るため、そして残りの星骸を探すため旅に出る。
しかし一つ選択を誤れば世界が滅びる危うい存在……
女神の使命を「絶対拒否」する不死者と、裏ボス級の従者たち。
これは、世界を滅ぼさず、統治することを選んだ男の英雄譚である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。
しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。
やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。
一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。
これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

