31 / 42
9話ー① 静寂の蹂躙
しおりを挟む「なに勝った気でいるんだよ。雑魚が。」
剣を構え、臨戦態勢に入った僕に対して、呪術師の目が鋭く光る。
周囲の空気が一瞬にして緊張に包まれ、風が木々を揺らし、鳥たちが静かに身を潜める。
闇が深まり、月明かりが鋭く剣の刃を照らし出す中、呪術師の声が静かに響いた。
「気でも狂ったか?」
彼の声には不信感と軽蔑が混じり合い、その言葉は冷たく鋭く僕の心に突き刺さる。
静寂の中、二人の呼吸音だけが微かに聞こえ、緊迫感が高まる。
「4人であの戦いだったのだぞ。手負いのお前1人など。」
「本当にそうかな?ほら見てよ。」
そう言って、僕はゆっくりと両腕を掲げ、呪術師に見せつけた。
毒にまみれたはずの腕は、驚くほど無傷だ。
まるで初めから何もなかったかのように、傷一つないその姿に呪術師の目に見張っている。
「バカな!信じられん!!完治したというのか!?」
「気づくの遅いなー。」
今回の戦いでは、僕は一度たりとも本気を見せていない。
あの巨大なベヒモスとの戦闘でも、同じように力を抑えていたのだ。
「この結界って外からの監視を遮るんだよね?」
「何を今更。天界の監視をも遮断する最強の結界呪法ぞ!」
僕は胸中で安堵の息をついた。
念のため、先ほどの修復の際に、僕が結界の遮断性能をさらに強化しておいたのだ。
そのため、ここで何をしようとも、外界には決して知られることはない。
「なら。僕が何しても外からは見えないんだね?」
「お主。何を……まさか負をそのまま扱えるのか?」
負をそのまま扱う?そんなもの原素エーテルを直接操ることよりも不可能だ。
呪術師は明らかに混乱している。
しかし、僕にとっては好都合だ。
久々に力を発揮できる舞台が整ったし、少しだけ運動させてもらうことにする。
一先ず......
「この腕は誰の腕かな?」
「んぁ?ぁああああ。わ…わしの腕がぁ!!」
僕は呪術師の目で追えない刹那の時間で腕を切り落としてみせた。
「何だ……何なのだお前は」
どういうことだ?これほどの実力を隠していたのか?
これだけの力があれば、私ごとき、いつでも倒せたはず。
こいつ……仲間が瀕死になったのに、その実力で助けることもできたはずなのに、あえて助けなかったというのか!?
呪術師の思考は混乱していた。
「血も涙もない怪物が!確かに不可解だった!!お前は飛沫を全身に浴びたにも関わらず無傷だった!」
「ちなみにさっき両腕に負った傷は自分でつけた傷さ。見られたら困るからね。」
僕は特殊な生前の事情から、あらゆる毒や呪いに対して高い耐性を持っている。
もしエリーがならば、あの結界内でも平然と暮らせただろう。
そんなことを思うと、今回の任務に彼女が来ていないことが悔やまれてならない。
「そもそもあの呪い毒ほぼ効かないんだよ。」
「何のためにそんな真似を……」
エリーからは「用心深さが病気」とよく言われるけれど、あいつも同じように色々隠しているから、お互い様だろう。
そんな雑念を頭の片隅に置きながら、僕は視界の限りに万を超える小型魔法陣を展開した。
その瞬間、空間が圧倒的な魔力で満たされ、まるで星空に無数の星々が輝いているかのような光景が広がった。
「楽しもう。どうせ死ぬんだからね。」
「ふざけるな!!ワシにはまだやりたい事が……!?」
天空、地上、地表......視界に入る全ての空間に魔法陣が展開された。
呪術師を取り囲むように配置された魔法陣の数は一万以上。
それは呪術師にとって......
......『絶対不可避』の絶望であった......
0
あなたにおすすめの小説
タイム連打ってなんだよ(困惑)
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」
王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。
パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。
アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。
「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」
目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?
※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。
『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~
イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の取材中、異世界の大地の女神と接触する。
半ば強制的に異世界へと転生させられた彼は、惑星そのものと同化し、“星骸の主”として不死の存在へと変貌した。
だが女神から与えられた使命は、この世界の生命を滅ぼし、星を「リセット」すること。凛人はその命令を、拒否する。
彼は、大地の女神により創造された星骸と呼ばれる伝説の六英雄の一人を従者とし、世界を知るため、そして残りの星骸を探すため旅に出る。
しかし一つ選択を誤れば世界が滅びる危うい存在……
女神の使命を「絶対拒否」する不死者と、裏ボス級の従者たち。
これは、世界を滅ぼさず、統治することを選んだ男の英雄譚である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。
しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。
やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。
一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。
これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる