7 / 28
大阪
しおりを挟む
失恋から立ち直るために夏休み、大阪に一カ月行くことにした。
なぜ大阪かって?
毎日吉本喜劇に通って、笑って、食い倒れて、道頓堀から川にダイブしたら失恋の感傷なんて吹っ飛ぶと思ったからだ。
大阪でバカやって無理にハイにならないと、夏休みの間にうつになりそうな程、落ち込んでいた。
新幹線の中で、あの日のことを思い出して、泣きそうになった。
六年間の片思いがガラガラと崩れ落ちた。渋谷のスクランブル交差点の前で粉々に砕け散った。
宮前が彼女を紹介した時、心が折れた。思いっきりバキッて心の折れる音が聞こえたよ。
男が好きだなんて、やっぱり僕、おかしいのかな?
新大阪駅に着き、リュックを背負うと、ずっしりと重かった。
とりあえず一週間、梅田のビジネスホテルを予約してあった。
ホテルの部屋でシャワーを浴びて一休みした後、夕方に堂山という地区に行ってみた。
飲み屋、風俗店、自動販売機やコインパーキングなど目につく普通の繁華街だった。
でも西のゲイエリアと呼ばれる有名な場所だけあって、男同士仲良く歩いている人を結構見かける。
堂々としていて、楽しそうだった。
なんだ、ゲイなんていっぱいいるじゃないか。
自分もこの人たちと同じなんだ。
すこし安心して梅田に戻り、駅ビルのお好み焼き屋に一人で入る。
大阪弁で会話が飛び交う元気な店は、サラリーマンやOLのお客さんで大繁盛していた。
カウンター席に座り、ミックス焼きを注文する。
おばちゃんが、アルミのボウルに入ったミックス焼きを持ってきた。
そこは自分で焼く店だった。
お好み焼きなんてどうやって焼いたらいいのか分からない。
具の入ったボウルを途方に暮れて見つめていると、横の男の人が聞いてきた。
「もしかして、焼きかた知らん?」
「はい」
「あんた、東京の人か? じゃあ、俺が焼いたるわ」
僕より少し年上の人。サラリーマンではなく、大学生みたいだ。
慣れた手つきでお好み焼きをひっくりかえし、ソースやマヨネーズをトッピングしてくれた。
「どばって青のりかけるとごっつううまい」
そう言って山盛りに青のりを振る。
「できたで、熱いから気いつけてな」
笑顔がキュートな大阪弁の青年の名前は枚方正二、大阪大学工学部三年生。
そのあと、二人で居酒屋に行ってビールを飲んでメアドを交換した。
出会って一週間後に僕はその人に恋をした。
枚方正二はゲイだった。
なぜ大阪かって?
毎日吉本喜劇に通って、笑って、食い倒れて、道頓堀から川にダイブしたら失恋の感傷なんて吹っ飛ぶと思ったからだ。
大阪でバカやって無理にハイにならないと、夏休みの間にうつになりそうな程、落ち込んでいた。
新幹線の中で、あの日のことを思い出して、泣きそうになった。
六年間の片思いがガラガラと崩れ落ちた。渋谷のスクランブル交差点の前で粉々に砕け散った。
宮前が彼女を紹介した時、心が折れた。思いっきりバキッて心の折れる音が聞こえたよ。
男が好きだなんて、やっぱり僕、おかしいのかな?
新大阪駅に着き、リュックを背負うと、ずっしりと重かった。
とりあえず一週間、梅田のビジネスホテルを予約してあった。
ホテルの部屋でシャワーを浴びて一休みした後、夕方に堂山という地区に行ってみた。
飲み屋、風俗店、自動販売機やコインパーキングなど目につく普通の繁華街だった。
でも西のゲイエリアと呼ばれる有名な場所だけあって、男同士仲良く歩いている人を結構見かける。
堂々としていて、楽しそうだった。
なんだ、ゲイなんていっぱいいるじゃないか。
自分もこの人たちと同じなんだ。
すこし安心して梅田に戻り、駅ビルのお好み焼き屋に一人で入る。
大阪弁で会話が飛び交う元気な店は、サラリーマンやOLのお客さんで大繁盛していた。
カウンター席に座り、ミックス焼きを注文する。
おばちゃんが、アルミのボウルに入ったミックス焼きを持ってきた。
そこは自分で焼く店だった。
お好み焼きなんてどうやって焼いたらいいのか分からない。
具の入ったボウルを途方に暮れて見つめていると、横の男の人が聞いてきた。
「もしかして、焼きかた知らん?」
「はい」
「あんた、東京の人か? じゃあ、俺が焼いたるわ」
僕より少し年上の人。サラリーマンではなく、大学生みたいだ。
慣れた手つきでお好み焼きをひっくりかえし、ソースやマヨネーズをトッピングしてくれた。
「どばって青のりかけるとごっつううまい」
そう言って山盛りに青のりを振る。
「できたで、熱いから気いつけてな」
笑顔がキュートな大阪弁の青年の名前は枚方正二、大阪大学工学部三年生。
そのあと、二人で居酒屋に行ってビールを飲んでメアドを交換した。
出会って一週間後に僕はその人に恋をした。
枚方正二はゲイだった。
12
あなたにおすすめの小説
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
想いの名残は淡雪に溶けて
叶けい
BL
大阪から東京本社の営業部に異動になって三年目になる佐伯怜二。付き合っていたはずの"カレシ"は音信不通、なのに職場に溢れるのは幸せなカップルの話ばかり。
そんな時、入社時から面倒を見ている新人の三浦匠海に、ふとしたきっかけでご飯を作ってあげるように。発言も行動も何もかも直球な匠海に振り回されるうち、望みなんて無いのに芽生えた恋心。…もう、傷つきたくなんかないのに。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完結】少年王が望むは…
綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる