新緑の少年

東城

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夕暮れ

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楽しい二丁目パブ出張も十一月にはパッタリと来なくなった。
酒を飲んだり、食べたりすることができないほど矢向さんの病状は進行していた。
女医は「年は越せない」とはっきり告知した。
この人は、エイズ患者や同性愛者を嫌っている。冷たい口調からそう感じ取った。

日に日に感染症や病状が悪化し衰弱していく矢向さんを見るのがつらかった。
矢向さんが亡くなる前日、寒々しい病室で言った言葉がある。
「中島に会いたい」
「恋人ですか?」
矢向さんは元彼のことを話してくれた。
「エイズだとわかったら、ふられちまった。まー、気持ちはわかるけど、さびしいな」
「がんや内臓の病気でも、配偶者を見捨てる人っています。僕にはよく理解できませんが、受け入れられないのと精神的に重いとかの理由で」
「先生、まだ若いんだから、俺の分まで人生を楽しんでくれよ」

次の日、矢向さんは亡くなった。
突然だった。衰弱から心臓が止まっていたのだ。
息をひきとっていたのを夕方、ナースが見つけた。

夕日の差し込むオレンジの病室で矢向さんに話しかけた。
「ねえ、矢向さん」
冷たい亡骸はもう話さない。
あんなにおしゃべりだった人なのに。
医者は泣いてはいけないのに涙があふれた。
僕は矢向さんに恋していた。

矢向さんのことを思い出すのがつらく、次の研修は精神科に決めた。
精神科の仕事も楽ではなかったが、だらだらと居ついてしまって、配属は精神科となった。
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