新緑の少年

東城

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クリスマスソング

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ちらし寿司と稲荷寿司とポテトサラダを用意してテーブルに並べる。
一二時きっかりに、ピンポーンとチャイムの音がした。
「朝日、お客さんだよ。出迎えてあげて」
朝日はソファーから飛び起きると、玄関に向かう。
そしてすぐに、走って僕のところに戻ってきた。
「栄! ありがとう」
続いて、三浦先生が「おじゃまします」と顔を出した。
眼鏡をかけた二十代半ばの女性。まじめそうな、いかにも教師といった風貌で乙女チックなふわふわなワンピースを着ている。

三人で昼食を食べながら、たくさんおしゃべりした。
「とっておきのサプライズがあります」三浦先生はワインを飲んでちょっと酔っていた。
「明日から私が、はざま君の家庭教師です」
三浦先生は、にっこり微笑んだ。
「二学期の終わりまでだけど、英、数、国の授業を担当します」
このことはメールですでに話がついていた。
休職している間、ボランティアで朝日の勉強を見てくれると三浦先生は言った。
「お昼と夕ご飯も作るわよ」と張り切っていた。
朝日はとても嬉しそうだ。もう大丈夫だ。
心の特効薬は案外すぐに見つかったね。
ラジオからはクリスマスソングが流れていた。マライア・キャリーの曲だった。
「また一緒に勉強できるね。先生、うれしい」三浦先生は言った。
かわいらしい女性だ。でも、恋愛対象にはならない。
僕は女性にはまったく興味がないから。

***

十二月二十三日、三浦先生の家庭教師終了の日。
朝日と三浦先生を家に残して、新宿にクリスマス・プレゼントを買いに出かけた。
クリスマスのデコレーションもすごかったが、人込みもすごかった。
デパートで三時間ぐらいフロアーを徘徊していた。
最終的に買ったのが、朝日には本と洋服。三浦先生にはネックレス。
家に戻ると三浦先生はすでにいなかった。
「帰っちゃったんだ」
「うん。実家に帰って、お正月は親と過ごすんだって。三学期の土曜にまた来るって。あ、これ三浦先生が栄にって」
クリスマスのラッピングされた包みを渡された。
「せっかくクリスマスのプレゼント買ってきたのに、渡しそびれちゃったな」
「クリスマスすぎでもいいんじゃない?」
「そう? クリスマス前にもらうから、クリスマスプレゼントって嬉しいんじゃないかと」
「そうだね。栄からのクリスマスプレゼント、最高にうれしかったよ。三浦先生連れてきてくれるなんてびっくりだったよ」
朝日は僕に抱きつき、腰をぎゅううと腕で締めた。
まだ子供の力だから痛くない。
無邪気にやってることだけにかわいいな。
僕も朝日を抱きしめたいなとときめく。
明日はクリスマスイブだね。
たった十日で朝日はすっかり元気になっていた。
朝日も先生も、学校に戻れるね。
一件落着だ。
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